出世払いで秋ごはん！｜リアクション

出世払いで秋ごはん！

☆洋食レストラン

　三折部朝衣は、定時で寝子島役場の仕事を終えて、秋物のコートをなびかせつつシーサイドタウンへ向かいました。
　行き先は洋食レストラン。
　そこでは恋人の住沢遥人が料理人として働いているのです。
（遥人が勤めている店はどんな感じかな）
　なんて思いながら初めて訪れたお店です。
（……なかなかいい感じよね）
　窓から中をうかがうと全体的に落ち着いた内装になっていて、ちょっと高級感漂う……という感じです。
（お一人様で来たのちょっと恥ずかしかったかな）
　とはいえ同僚と来るような感じではないし、しかたありません。
　思い切って店内に入ります。
「いらっしゃいませ。本日は『出世払いデー』で、特別に一食に限り無料となっております」
　店員に告げられて、朝衣は驚きました。
「そうなんですか？　ちょっと得した気分かも？」
　店員に案内されて、空いている席に案内されます。
（無料なのにサービスはきちんとしてるわね）
　彼の職場だと思うと、他の店よりもいろんなところが気になります。
　それからメニューを見せられて、少し迷いました。
（そういえば遥人はオムレツが得意、と言っていたわね）
「秋のキノコと野菜のオムレツをお願いします」
「かしこまりました」

　店内を見渡すと、一人のお客さんもいるようです。
　女子高生らしき清楚な少女が山盛りの料理を食べているのには驚きましたが。
　しばらくしてから、朝衣のところへ秋のキノコと野菜のオムレツが届けられました。
　湯気とともにいい香りが漂います。
「いただきます」
　早速食べてみると、表面はふんわり、中はトロトロ。
（秋の野菜と、キノコがバランスよく入っていてとてもヘルシーだわ）
　そうやって味わっている朝衣に近づく人影がありました。
　まず白い料理人の服が目に入り、顔を見ると恋人の遥人でした。
　驚きながらも、笑顔の遥人に尋ねます。
「これ……あなたが作ったの？」
「うん」
　頷く遥人。
　朝衣は嬉しくてたまらなくなりました。
　人目がなかったら抱きつきたいほどでした。
「とても美味しいわ！」
　心からの賛辞に、遥人も嬉しそうでした。
（一緒に住んだら、こんなおいしい料理を作ってくれるのかな……）
　厨房へ戻る遥人の後姿を見ながら、朝衣はそんなことを思ってしまうのでした。

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