【夜更けの大熱戦】

「クーックックック。我らに叶うと思うてかー！　ベリアル、蜃気楼システム最大出力！」
　テンションマックスな桜庭 円の声を合図に、ごうっと炎が燃え上がります。フィールドに炎があればそれを陽炎として、幻影を生み出すのが蜃気楼システム！
　鳳城 翔はセイクビリットの行く手に展開されるベリアルの幻影たち、それにおびただしい数のカボチャビットを前に、すうっと目を細めます。
「幻像による攪乱か。だが……」
　セイクビリットの頭部、ヴァミリオン・バードには敵の位置を察知する機能がありました。鋭い眼光でぎらりと睨めば、
「MAKIYUKI、１時方向。一番奥だ！」
「オッケ」
　牧 雪人がすかさず応えて、Ｂスナイパーガンで狙撃！
「うわぁ、バレるの早くない！？　やるなーちびっこ！」
「よし、畳みかけるぞMAKIYUKI……、っ！」
「私も忘れてもらっちゃ困るなー。ネージュリェーツ、砲撃だー！」
　ベリアルをカバーするのは、大火力のビーム砲を備える白 真白のネージュリェーツ。ずばばばばっと放たれるビームが墓石もろともに薙ぎ払い、セイクビリットは辛くも飛び上がって身をかわします。
「く……この連携攻撃、厄介だな」
　セイクビリットは相手の手管を見極めるべく、距離を取ってまずは回避に専念。
　ベリアルのビットが牽制し、遮蔽物の後ろへ追い込んだところへネージュリェーツの砲撃が炸裂、壁もカプギアもまとめて貫くという寸法です。隠れることも攻めに転じることもできず、SHOはひたすらに避け続けるのみ。
「さて、どう崩すか……」
「オマカセ。好きに動かしてイイよ」
「！　MAKIYUKI」
　無表情なMAKIYUKIは、SHOが自分へ指示して構わない、と言っているのです。どうやらそのくらいに、彼はSHOへ信頼を寄せてくれているようです。
　にわかに熱くなる胸を少し押さえて。
「……ボナパルト２を前進させてくれ。できるだけ、敵の攻撃を引きつけてほしい」
「ワケないね」
　短く言って、MAKIYUKIはスマホをタップ。彼の愛機ボナパルト２は、高機動力で常に有利な位置取りを確保し、狙撃を行う遊撃型です。そのスピードであえて最前線へ陣取り、ベリアルとネージュリェーツの猛攻を引きつけます。
　円と真白も、その意図を悟ったようです。
「おおっ、速い！？　でもボクのベリアルだって負けてないぞぅ。A.I.C.O.、幻影ビットさらに倍！　どん！」
　円は画面をフリック、ショートブーストで反撃のスナイパーガンを華麗に避けつつ、ブースターから撒き散らした炎からさらなる幻影を生み出し翻弄します。ベリアル自身も右腕の大型剣を構えて、突撃！
　真白のネージュリェーツはトラップを設置しつつ、陣地を維持。安全を確保しながらビーム砲撃を続けます。
「円ちゃん、気を付けて！　もう一機がなにか狙ってるみたい」
「ふふふん、こしゃくなー！」
　ビットと砲撃の雨あられがボナパルト２を追い詰めてゆき、ベリアル自身も大型剣をずばしゅばん！
　テンションが高いのは円だけかと思いきや、

「ふはははは、圧倒的じゃないかぁ！」
　真白も案外、こんな感じでして。
「おーいえー、このまま押し切っちゃうよ～！」
　やっぱり、ノリノリ！
　と、ボナパルト２の動きが一瞬止まり、
「っ、ミスった……！？」
「隙あり～！」
　猛進するベリアルがついに、左腕のクローでがっちりとボナパルト２を捉えます。
「吠えろ！　ベリアルゥ！　これがアイちゃんとの絆パワーよッ！」
　ゼロ距離から、手のひらに仕込まれたレーザーを最大照射！　ボナパルト２は大ダメージを受けて吹っ飛びます。
「……なんてネ」
「んっ？」
　けれどそこまでが、MAKIYUKIとSHOの作戦の内！
　ベリアルの攻撃の隙をめがけて、いつの間にやら肉薄していたのは、アフターバーナーで加速するセイクビリット！
「し、しまったー！　真白ちゃん援護をー！」
「ネージュリェーツ、砲撃でカバー……あ、あれー！？」
　なんということでしょう。仮装としてかぶせていた白い布が排熱効率に影響を与えていたらしく、ネージュリェーツはオーバーヒート！
「そ、そんな馬鹿なぁー！」
「きーてないっすよ真白ちゃ～ん！」
　しかたなくネージュリェーツは身体を張ってベリアルをかばいにいきますけれど、時すでに遅し。
「MAKIYUKI、アンタが繋いだバトンは俺が引き継ぐ……セイクビリット！　ラ・スパイラルッ！！」
「「どわーーー！！」」
　巻き起こった巨大な竜巻が直撃し、ベリアルとネージュリェーツはずががががんっと大ダメージ！
　その後もバトルは続きましたけれど、結局この一撃が決め手となり、やがてあえなく撃沈となりました。



「いやー、やられたねぇ」
「強かったねー。うん？」
　バトルを終えた円と真白のもとに、なにやら子どもたちが集まってきます。
「ねーちゃんたちも強かったなー！」
「大人げなかったけど」
「ねーねー、わたしバトルでぜんぜん勝てないの。おねーちゃん、コツを教えて？」
「あっちのフリースペースで、もっかいバトルしようよ！　リベンジするんだ！」
　なんて、わいわいわちゃわちゃ。
　ふたりは顔を見合わせて、にーんまり！
「おっけー、円おねーさんについてこーい！」
「じゃー真白おねえさんは、バトルのコツを教えてあげるね！」
　景品のカプギアグッズ詰め合わせももらえましたし、子どもたちにもモテモテで、大満足でありました。



　いっぽう、SHOとMAKIYUKIのバトルは続いています。
「MAKIYUKI、ボナパルトはまだ動けるのか？」
「なんとかね……並の相手ならワケないケドさ」
「ああ。これは厳しいバトルになるぞ……」
　ごごごごご……セイクビリットとボナパルト２の前に立ちふさがる、不気味な影。
　今回のスペシャルレアエネミー、CAPGEAR MEIJIN操る『レイス』！
「よくぞここまで勝ち抜いた、子どもたち！　しかし私のカプギアは簡単には倒せないぞ、ふははははー！」
「……なにか、これは」
「さっきのおねーさんたちとノリがいっしょじゃん」
　ともかく、強敵出現！
「せっかくのMEIJINとのバトルだ。せめて悔いの無いよう……いや」

「勝つぞ、MAKIYUKI！」
「オーケー。そうこなくっちゃ」
　本日一番の大バトルに、会場は熱く燃え上がるのでした！