雪に埋もれた寝子島｜リアクション

雪に埋もれた寝子島

「真境名さんは沖縄出身かぁ。じゃあこの寒さは堪えるでしょう」
「そうなのよー。寝子島には一年くらい前にきたばかりだし、もうびっくりで」
　夏朝とアリサはおしゃべりをしながら歩いている。餅や七輪、燃料に使い捨ての容器と箸などを購入した帰り道だ。
　家主の許可を得た夏朝がかまくらを作ろうとしていた所に、アリサが「一緒に作っても良いか」と申し込み、快諾。二人は協力してかまくら作りに励み、これからお餅を食べるとあってうきうきだ。
「さーて、お餅を焼く準備を……って、わぁぁ！？」
「ちょ、ちょっとあなた、大丈夫？」
　かまくらを作った場所に帰ってくると、何とそこには金髪の少女が倒れていた。アリサが助け起こして、ぺちぺち頬を叩く。
「しっかりして！　あなた、名前は？」
「うぅ……アカリ、デース……アカリ・ゴールディング……」
「これ、ゆっくり飲んで」
　夏朝は先ほど買ったばかりの甘酒缶を開け、口に近づけると、アカリは少しずつ飲んだ。
「はふぅ……危ないところをお助け頂きありがとうございマース。お礼の品として、こちらをドゾー」
　アカリが差し出した、インスタントお汁粉のパックを見て、アリサと夏朝は視線を合わせ、ガッ！　と熱い握手を交わした。
「こ、これは……ッ！　甘くて、トロトロで、とってもdeliciousデスね！」
　３０分後。夏朝、アリサ、アカリの三人は、七輪で焼いたお餅をインスタントお汁粉に投入し、かまくらの中で熱々を味わっていた。お湯だけは家主にお願いして沸かしてもらったが、念願のかまくらグルメである。
「ふーふー……って、熱っ！　はぁ、でも美味しいわー」
「僕はちょっとお湯を多めにしよっと……あ、アカリさんのお餅、そろそろ食べ頃だよ」
「カアサ、ありがとデース。はふ、はふ……初めて食べましたが、これが日本の冬というモノなんデスね！」
「そうよぉ。雪だるま、かまくら、そして七輪で焼くお餅、どれも風情があるでしょ？」
「お餅はバター醤油で食べるのも美味しいよ！　今度試してみてね」
　この後、夏朝とアリサは、寝子島に来たばかりだというアカリにせがまれて、日本について色々伝授することになった。

◆

　若菜が救急科からの呼び出しに対応し終え、病院の廊下を歩いていると、ポニーテールの女性を乗せたストレッチャーが脇を通り過ぎていった。
「大丈夫ですか？　お名前は言えますか？」
「ティオレ……ティオレ・ユリウェイス、だ……」
　看護師の問いかけに、それだけ応えると、女性は顔を真っ赤にして唸っていた。
　小児科病棟に帰ってから聞いた話では、雪かきボランティアの女性が甘酒を飲んで倒れたらしい。
「甘酒、ねぇ……」
　はて、と若菜は首を傾げた。

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あとがき

担当マスター：陣杏里
ファンレターはマスターページから！

皆様こんにちは、陣杏里です。

子どもの頃は雪が降ると嬉しかったけど、大人になるとそうでもないと思う今日この頃。寒いし、通勤に命の
危険を感じます。
皆様の熱のこもったアクションを、楽しく読ませて頂きました。スキーにかまくらグルメ、私もやってみたい
です……。
それでは、ご参加下さったかた、お読み頂いた方、ありがとうございました。

『甘酒は麹の方が好き』な陣杏里でした。

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