雪に埋もれた寝子島｜リアクション

雪に埋もれた寝子島

（ずいぶん早い雪ですね……神魂の影響でしょうか？　尚輝先生、風邪を引いていないといいのですが）

　目覚めて銀雪を目にした御巫時子が、真っ先に心配したのは五十嵐尚輝先生のことだ。いてもたってもいられなくなった時子は、朝食を済ませ、コートや手袋でしっかり防寒して学校へ向かった。
「おや、御巫さんではないですか。おはようございます」
「尚輝先生、おはようございます！」
　到着した時子が目にしたのは、閉めた校門に鍵をかけ、『本日大雪のため臨時休校』という看板を出している尚輝の姿だった。
「せっかく来て頂いたのですが、今日の学校はお休みになりましてね。御巫さんも足下に気をつけて、風邪を引かないうちにお帰り下さい」
「えっ？　そうなんですか……」
　慌ててスマホを見ると、確かに臨時休校の知らせが届いている。
　彼の風邪を心配するあまり、スマホを見ることまで考えが回らなかった。その上逆に気遣われてしまい、時子は嬉しいやら気恥ずかしいやらで頬が熱くなるのを感じた。
「あら……寝子電も止まって……雪かきボランティア募集？」
「おやおや、そんな大規模な事になっているんですか？」
　尚輝が不思議そうに問うてくるので、時子はスマホの画面を見せた。

◆

「え、なにこれ、雪！？　まだ１０月なのに？」
　白真白はその名にふさわしい白雪を目にし、パジャマのままで外に出てみる。そっとすくって宙に投げると、舞い散る雪が太陽の光を受けてキラキラと輝いた。
　きれいだけど、学校へ行くの大変そうだなぁ……と思いつつ、部屋に戻った真白をスマホの着信音が呼ぶ。
「えっ！？　雪だから学校はお休み？　これは……せっかく面白いことになってるんだし遊びに行かないと！」
　スマホで九夜山の衛星写真を見ると、牛乳プリンのように山全体が真っ白になっているが、ロープウェイは動いているようだ。
「そうこなくっちゃ！　滑るならやっぱり山だよね」
　手早く着替えて朝食を済ませ、家の倉庫からショートスキーの板を出して準備。防寒着に身を固めて、九夜山へ出発だ。
　むろん戸外は身を切るような寒さなのだが、わくわくを抑えきれない真白はものともしない。
　少し回り道でも、車の轍を進んでいくのがいいだろうと、さくさく歩いていくと。
「あれ？　学校はお休みだけど制服姿？」
　シーサイドタウンのショップ方面へ向かう道を、金髪の少女が背を丸めて歩いているのに出くわした。
「グランマの言ってた四季の国は一体……いつアカリはアラスカに来たデース？」
　真新しい制服で鼻水をすすりながらの言葉に合点がゆく。きっと彼女は寝子島に来たばかりで、冬服がないのだろうと。
「こーんにちわー！　急に寒くなっちゃって、困りますよねー！　良かったらこれ使って下さい！」
　ポケットに入れていたカイロを突き出すように渡し、ぺこりと一礼してスキー板を担ぎ直す。
「あ、ありがとうございマース！」
　真白は金髪の少女――アカリ・ゴールディングに手を振って別れを告げ、目的地へ歩き出した。

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