【演劇祭】ＮＫ３-寝子高３年連合-　海賊奇譚｜リアクション

【演劇祭】ＮＫ３-寝子高３年連合-　海賊奇譚

★海賊奇譚（『神宿る刀』の使い手達～雷雲去りて）

　ごく短い間、協力し合うこととなった『神宿る刀』の使い手達。
　その息は、敵同士であることが嘘のようにぴったりと揃っています。
　真艫と楔が同時に刀を振るえば、風と氷が合わさり、絶対零度の吹雪が生まれました。

その眼に　刻み付けろ
白き風が生む　極寒の煌めき

　蛍と真艫が力を合わせれば、煉獄業火の螺旋が徒波を襲います。

その心に　刻み付けろ
地獄の火炎　嵐となりて荒れ狂う様

　楔と水簾が軽く視線を合わせて生むは、変幻自在の監獄です。

その身体に　刻み付けろ
綾なす氷と水　お前を決して逃がさない

　水簾と蛍が呼吸を合わせれば、生まれるのは、灼熱地獄の蒸気。

その五感に　刻み付けろ
全てを焼き尽くす　目に見えぬ死神

　４人の声が、揃います。

重なり合う　４色の一閃
我らの前に　立ちはだかる者は
神だとて　恐れはしない
炎よ　氷よ　風よ　水よ
全て断ち切れ　我らの道　切り開け

　そして――蛍、楔、真艫、水簾。
　４人の刀が、すらりと、天高く伸ばされると――、

◇

　４人が水神の刀を掲げるその時を、呉井陽太はじりりと待っていた。
（４本の刀の煌く瞬間は、役者全員の最高の見せ場だ）
　全編通して演出に一切の妥協はないが、特に、このシーンには力を入れた。
　目を瞠るような映像、鳥肌の立つほどの鋭い音。
　それらが、陽太の操る照明と共に、これ以上ないタイミングで舞台上を彩る。

◇

　途端、雷鳴さえも掻き消すような閃きが、辺りに走りました。
　徒波が、断末魔の叫びを上げて、ずしゃりと倒れます。

◇

（……よし、練習した通りに動けた！）
　背を伝う汗の温度を感じながら、高梨煉は胸の内に笑む。
　皆で何度となく練習を重ねた甲斐あって、見せ場を鮮やかに演じ切れた自信があった。
　けれど、まだ気は抜けない。
　皆が雷神の刀を取り合う姿を目に、煉は真艫の顔をして、己が口を開くべき時を待つ。

◇

　雷神の刀を巡って、一行は揉めに揉めました。
　今にも実力行使が、新たな戦いが始まろうかとした、その時。
　青い雷が、再び雷神の刀に落ち、刀は真っ二つに折れてしまったのです。
　両海賊団の面々は、ぽかんとして互いに顔を見合わせました。
　暫くの後――最初に我に返った水簾が、くつくつと笑います。
「刀が折れちまうとはなぁ……一体どういう意味なんだか」
　それは、誰にもわかりません。
　けれどもとにかく、両海賊団は、折れた刀を、それぞれに持ち帰る運びとなりました。
「じゃあな、『まほろば海賊団』さん。次会う時は、争いがないことを願うよ」
「いつかはその半身、もらうからな」
　刀の半身を手にしての真艫と水簾の言葉に、楔は嘆息し、蛍は眼差しを険しくします。
「それは、私達の台詞よ」
「参りましたね。私達の奇縁は、まだ途絶えてくれるつもりがないらしい」
　こうして、彼らの此度の冒険には、一応の幕が下りたのでした。
　ですが、両海賊団の冒険は、まだまだ、続きます。

＜終＞

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