【演劇祭】ＮＫ３-寝子高３年連合-　海賊奇譚｜リアクション

【演劇祭】ＮＫ３-寝子高３年連合-　海賊奇譚

★海賊奇譚～開幕直前！～

　上演当日、『STARHILL Theater』の舞台裏。
「いよいよ本番か、緊張すんな……」
　胸に手を当てての桐野正也の呟きに、
「リハもバッチシだったし、ダイジョーブダイジョーブ！」
　と、志波武道が軽やかに声をかける。
「ほら、きりのん、笑って笑って☆」
「って、ブドー、メイクがまだだからって頬をつまむな！」
　２人のやり取りにからりと笑ったあとで、宇佐見望月が、
「しっかし、俺様が手配した衣装、やっぱカッコいいな！」
　と、その仕上がりに満足げに言い、その言葉に、武道が「ウンウン！」と満面の笑顔で頷く。
「リハでも着たし、そのあと手を加えたりもしたけど、やっぱ衣装に身を包むと、気持ちも切り替わるよね☆」
「ブドーの場合は、役になり切る時の切り替わり方が怖いくらいだけどな。ほんとすげぇよ」
　と笑うのは、高梨煉。
「お、開演前かられんちゃんに褒められるとは、幸先イイネ☆」
「すごいと言えば、雅樹君が担当した大道具も圧巻だよねぃ」
　使い込んだ台本を手にした、黒子姿の呉井陽太の言葉に、森篠琳子も同意を示す。
「孤島のセットなんて、あの中で演技してたら、本当に雷神の刀が眠る島に立っている気持ちになるもの」
「ああ。それから、望月の海賊船も凝ってるよな。北里の担当なら、小道具なんかもすげーし」
　正也もそう続け、「ん、雰囲気が出てるならよかった」と北里雅樹。
「んじゃ、そろそろメイクもしちまうかー」
　と言って、望月が取り出したのは、ボディペインティング用のクレヨンだ。
「隈取り風メイク、必要なら言ってくれな♪　赤と青、２色あるぜー」
「ん？　そっちの茶色のは？」
「あ、これ？　刀に呑まれる役は人外みたいなもんだから、それ用に……」
　煉の疑問に望月が応じたところで、望月のスマートフォンがぴこんと鳴った。
「おっと、ニャインだ……なになに……えっ、刀に呑まれるヤツがインフルエンザ？！」
「おい、マジかよ！？」
　望月の声が跳ね、正也も目を瞠る。
「どーすんだよ、もうすぐ本番……って、またニャイン？」
「今度はどうしたの？」
　固い声で琳子が問えば、望月は青い顔をして、
「……もうひとり、インフルエンザです……」
　と、がっくりと項垂れた。
「どうする？　裏方から代役を出さなくちゃかな？」
　顎に手を宛がって陽太がちょっと難しい顔で言い、
「なら、宇佐見が適任じゃないか？　ひとりひとりの役者のことまで、細かく把握してくれてるしさ」
　と、雅樹が提案する。
「へ……俺、なの？　つか、雅樹ちゃんこそどーよ？」
「え？　何で……」
「後半はずっと島のシーンだから、大道具の雅樹ちゃんなら、何とかなるんじゃ……」
「いやいやいや、人前で演技するのって、俺、なんか気恥ずかしくて……」
　望月と雅樹の言い合いを目に、琳子が、
「……この２人で決定でいいんじゃないかしら」
　と、ぽつりと零した。

　そして、メイクや最後の打ち合わせも終えた、開演５分前。
　武道は、裏方チームと役者チーム全員を集め、皆の顔を見渡して、言った。
「歌に踊りに殺陣に演出に……皆、色々とありがとう」
　劇団員の仲間達が、それぞれに頷く。
「今の俺から言えるのは、ただ一つ」