【演劇祭】劇団ねこよろず　マスコット猫の秘密？｜リアクション

【演劇祭】劇団ねこよろず　マスコット猫の秘密？

○終幕

「クロサーキ、逃げちゃったね。応援を連れてきたらどうしよう？」
　ののこあかずきんちゃんの言葉に、シンデレラは言う。
「他の方面の強魔軍は他の物語の主人公達がきっと倒してくれていると願うわ」
「万一こちらに来たとしても、そのときは、また力を合わせて皆で戦いましょう」
　月赤ずきんも答えた。

　爆発が収まった後、童話の主人公たちは攻撃をやめた魔物たちの話を聞いた。
「むむ。魔物さん達も困っていたんだね。助け合いは皆で生きていくのに必要なんだね。
傷つけあいは解決策にはならないね……」
　ごんはお耳垂らしてちょっと反省。
　反発する魔物達を優しく説得するグレーテル。
「あなたたちが生まれたのにはそんなわけがあったのね。童話世界はあなたたちの居場所にもなれると思う。物語は主人公だけじゃ成り立たない。皆がいてこその物語。でも、不満もあると思う。だから、その分こっちの世界で楽しんだら良いんじゃない」
　赤ずきん月も優しく言う。
「私達は悪を憎めど貴方方を憎んではいません。貴方達もどうですか？　一緒に平和な日常を楽しみましょう」
　一時は死んだかと思われたヤガミンは息を吹き返し、ついに皆の説得を受け入れた。
「俺たちが間違っていたのかもしれない。助け合う平和な暮らしには、戦いにはない安らぎがある……だが、あんなことをしてどの面下げて俺たちが楽しめるというのだ」　
　ちょっと考えて、グレーテルは言った。　　
「楽しむ……というか、お店の新しい店員兼マスコットになればいいんじゃない？」
　目を見開いたヤガミンは、しばらく目を閉じた後に、尻尾を捧げ持つようにして言った。
「降伏だ。俺たちはお前たちと戦うのはやめ、猫の姿となろう」

　暗転の後、舞台が明るくなると、舞台袖のあおいお姉さんが言った。
「尻尾を捧げた魔物達は猫になりました。猫達は気ままにのんびり自由に店での生活を楽しんでいます」
　ののこあかずきんちゃんが、猫のぬいぐるみを幸せそうに撫でている。
「どうぞ」
　エプロンをつけたヤガミンが、自然な笑顔で皆にお茶とお菓子を出していた。
　グレーテルはお茶とお菓子を口にし、微笑む。
「……うん、おいしい。ありがとう！」
　その笑顔には、かつてお菓子を食べることに感じていた罪悪感はみじんも感じられなかった。
　あおいが最後の説明をする。
「時々、人間の姿に化けて手伝う事もあるようです。
名無しのよろず屋はこうして『ねこよろず』になりました。童話の登場人物たちは、いつまでも仲良く幸せに暮らしたということです」

　子供たちの笑顔をもっと見ていたいけれど、幕が静かに降りてくる。
　万雷の拍手というのは、こういうことを言うのだろう。
　まほろは安堵と共に胸が熱くなるのを感じて、周囲の仲間に目をやった。
　晴れやかに上気した顔、堂々とした様子。
　幕が降りたら物語はおしまい、魔法は解けてしまうけど。
（わずかな時間だったけど、私たちは舞台の上で役を生きていたんだ……）

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