ずばっと解決！　生徒会疾風伝！｜リアクション

ずばっと解決！　生徒会疾風伝！

◆がんばれ方向音痴ガール

「方向音痴かぁ……」

　息も絶え絶えの楡宮遠海を前に、五郎八はうーんと唸って視線を泳がせる。

「駄目な人は本当駄目らしいからねぇ……治そうと思っても一朝一夕には難しいだろうし」
「そうなんです……」

　遠海はそう、『本当駄目』な方向音痴だった。おかげで地理の成績は芳しくない。目安箱に投函するまでに実は目安場所の場所がわからず、半泣きのまま放課後校舎内を彷徨っていたくらいだ。そのうえ、生徒会メンバーとの待ち合わせ場所がわからなくて、五郎八と武道が迎えに来たくらいである。
　さすがに通学路に関して言えば道に迷わなくなったけれど、今後もこの調子で方向音痴に悩むことになるのは嫌な話で、多少は解消されてほしいという一心で目安箱に投函したのだった。

　というわけで、『一朝一夕には難しい』という五郎八の言葉は彼女にぐさりと突き刺さった。

「んー、常に『北』を意識して歩くといいって聞いた事があるよぅ」
「北……北……うーん」

　陽太のアドバイスに、遠海はいまいち要領を得ない様子で宙を眺めている。今立っている場所の『北』がどこかもわからないだろう。陽太の言葉を継ぐように、修が続けた。

「地図を活用とか、メモはどう？　建物を目印にしても良いね」
「それ、試してみたんですけど……行きと帰りで景色が変わるからこんがらがっちゃって」

　それを聞くと、修は少し思案する。それからどうにかしてやろうという熱意が先走ったのか、ほとんどまくしたてるように声を出した。

「そんな時は地図アプリ。人に聞くのも立派な方法さ。迷ったらまずは進まない。それもコツだ。まず深呼吸、外なら太陽で方向が分かる。ここは日本、言葉も通じる、大丈夫だよ」
「あ、え、ええと……だから、スマホでマップを呼び出しても、地図がわからなくて……」
「落ち着こ落ち着こ！」

　次々と耳に入るアドバイスに遠海が混乱したのを察して、武道が二人の間に割って入る。そうして彼は、修のアドバイスをすこし噛み砕いて説明した。

「高くて、シンプルなデザインの建物を軸に考えてみるとか、人に尋ねるときは――」
「な、なるほど……！」

　武道の言うを真剣にメモすると、遠海は五郎八に目を向ける。期待煌めく瞳は何かないかと訴えていた。五郎八はスマホを動かしながら、アプリがダウンロード出来るページにアクセスする。

「……うん、まあ私も文明の利器に頼るのが良いと思うよ」
「うーん、でも地図はわからないし……」
「そうだねえ」

　とここで、彼女は遠海にそのページを見せ、ページのアドレスを遠海宛に送った。

「これは音声がナビしてくれるアプリなんだけど、これなら地図が読めなくてもわかるんじゃないかな」
「そうなんですか！　早速入れてみます」

　そうして、遠海はアプリをダウンロードしつつ、武道や修のアドバイスをあれこれと実践すると、生徒会の面々にお礼を言った。

　それから数日後、目安箱にこんな手紙が投函されたという。

『少し迷いにくくなりました。ありがとうございました！』

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