クリスマスを阻止！？　ハロウィンの逆襲｜リアクション

クリスマスを阻止！？　ハロウィンの逆襲

　緑と茶色が混ざった空で丸い月が声なく笑う。大地は赤と紫の色が拮抗して所々に黒が割り込む。
　何の前触れもなく、白真白は世界に取り込まれた。被ったフードにはウサギを模した耳が付いていてスカートの柄にも数匹が紛れている。ブーツのリボンがメルヘンチックで世界に馴染んでいた。

「わわ、なんだろ。このハロウィンな世界は。もうすぐクリスマスなのに」
　住人のような姿で軽い驚きを見せる。
「クリスマスは訪れないのデス！　終わらないハロウィンを楽しめばいいのデス！」
　空から降ってきた声に真白は反応した。見上げるとオレンジ色のカボチャ、ジャックオランタンが中空に浮かんでいた。
「カボチャさん。ハロウィンは楽しいけど、毎日だと飽きるよ」
「カボチャ、カボチャ、うるさいデス！　偉大なるジャックオランタンに恐れ戦くのデス！」
「そんな笑顔で言われても～」
　苦笑する真白にジャックオランタンはベロンと舌を出した。ぶらぶらと揺らして空の彼方に飛んでいった。
「こんなところに置き去りにされても困るんだけど」
　真白は周囲に意識を向けて一方に駆け寄る。アドベントカレンダーが見捨てられたように佇む。両手で持ち上げて窓を下にして振ってみる。
「空っぽみたい。これってハロウィンじゃなくてクリスマス？」
　周囲に目を凝らす。クリスマスに関連する物が幾つか目に留まった。
　素っ気ないモミの木が見える。近くに落ちているリースには何も付いていない。細々とした飾りは菓子に半ば埋もれていた。
「どちらも、楽しみたかったのかなぁ。戻ってくればいいのに……」
　真白は空を見上げてしんみりと言った。
　思い直したかのように笑顔を見せる。
「それなら私が楽しんじゃうよ！」
　笑顔のカボチャをモミの木に取り付けた。羽を広げたコウモリや丸みのある幽霊をリースに絡めて先端に引っ掛けた。サンタクロースを上部に付けて星で囲んだ。
　空っぽのアドベントカレンダーには小さなモンスターを入れた。小さな鈴も押し込む。全ての窓にハロウィンとクリスマスの要素を詰め込んだ。
　真白は完成したクリスマスツリーの横に立つ。挑むような目を空に向けた。
「カボチャさん、皆でしたら、もっと楽しいよ！」
「ハロウィンだけでいいのデス！」
「え、どこ！？」
　声の近さに姿勢が崩れた。急いで振り返るとジャックオランタンが大地を跳ね飛びながら横切った。
「カボチャさーん、待って欲しいんだよぉ」
　ウサギの耳を振り乱して曖浜瑠樹が追い掛ける。カボチャを模した短パンには愛らしい尻尾まで付いていた。
「ハロウィンを楽しみやがれーデス！」
　捨て台詞を残し、ジャックオランタンは消え去った。
　力が抜けた瑠樹は足を止めた。息を整えるとにっこりと笑う。
「カボチャさんはカケッコもすごいんだねぇ」
「男の子のウサギだね。短パンがハロウィンっぽい」
　真白はウサギらしく、跳ねるようにして近づいた。
「お姉さんもウサギさんだよぉ」
「女の子のウサギだね。よかったら一緒にカボチャさんを探さない？」
「いいよぉ。みんなで、なかよくが一番だよねぇ」
「そうよね。じゃあ、あっちに行ってみよう」
　二人は腕を振り、共にウサギの耳を弾ませて歩いていった。

このページにイラストを設定する