部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

部活動のお時間です！～運動部編～

旅鴉月詠は放課後の校内をスケッチブックを片手に練り歩いていた。
適当な部活の活動場所に現れては、端に座ってその様子をスケッチしていく。

最初に訪れたのは陸上部。
マネージャーの空音の後ろにちょこんと座って、走っている姿をスケッチしていく。
筋肉の様子や躍動感をぼかしで表現し、スピード感を出す。

「月詠ちゃんなのだ？なにしてるのだ？」
「スケッチしてるんだ。走ってる人たちの」
「うわぁ、本当に走ってるみたいなのだ！写真みたいなのだ！」

黒白のスケッチを手に取り、真央は大はしゃぎ。

「もし欲しかったら、やろうか？それ」
「いいのだ？嬉しいのだ！」

いたく気に入った様子のスケッチを一枚、切り離して真央に託す。

「部活頑張って」

そう言って真央の髪をくしゃくしゃと撫でると、次のターゲットを求めてグラウンドを離れた。

プールサイドに姿を現した月詠は、画材がぬれないよう極力離れた状態でスケッチを始める。
武道の筋肉質な身体と面積の少ない水着、寿美礼のさんまさんパーカー姿。それに小麗や荒太郎に熱心に指導するまゆ先生の姿を描いて行く。

「いい画を描くわね」

いつの間に隣に居たのか白虎が手元を覗き込んでいた。
ちょうどまゆ先生を描き上げたところだったこともあり、まゆ先生ラブの白虎は思わず声をかけたようだ。

「まゆっち、がんばってる？」
「……頑張ってると思いますよ。生徒から慕われていますし」
「そっか。……よかった」

白虎のまゆ先生に抱き着いているときからは想像できないような穏やかな表情を横目に見ながら、月詠はしっかりと目に焼き付けた。

その日最後に訪れたのは武道場。
剣道部が試合形式の練習を行っていた。

「剣道着を着ると、普段とは雰囲気が違うな」

そう呟きながら、普段より少し力強い線でスケッチしていく。

「鬼気迫る、というのだろうか」

刀と千歳の竹刀の交わりを、実際に見ているかのような錯覚を起こすほどのデッサン力で描き写していく。

「御剣は胴着がよく似合っている」

練習の邪魔にならないうちに退散し、スケッチを片手にアトリエへ。

鉛筆で描き起こしたスケッチをもとに水彩で転写していく。
砂や風、水、汗や光を大事にしながら、筋肉の動きをはっきりと描き写していく。

描き終わる頃にはすっかり日は暮れて、三日月が空に浮かんでいた。

「出来上がったものは……そうだな。本人たちにプレゼントするか」

筆をおいて窓から空を見上げる。