寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●アダルト：エントリーNo.15 真辺敬子

　何年ぶりだろうか。
　久しぶりに制服に袖を通した真辺敬子は、この寝子高で過ごした高校時代を思い出していた。
　在学中にもこのカードが入っていて、問答無用で出たことがあったっけ。
「まあ久しぶりに制服が着られる機会だと思えばいいか」
　そのときふと、よく見覚えのある巨体が、同じ控室の中にいるのに気づいた。
「熊センセ……じゃなくて、吉田先生。ご無沙汰してます」
　熊先生の背中がびくり、と動いた。
「お、おう。なんだ。真辺姉か。元気にしてたか」
「はい。いつも弟がお世話になってます」
　担当学年の違う熊先生にお世話になっているかどうか分からないが、とりあえず弟は在学中なのでそう言っておく。そのあたり、さすが社会人だ。
「ところで……」と敬子は含み笑いをした。「もしかして、先生も出場ですか？」
　熊先生は、バッと持っていたものを後ろ手に隠した。
「あれ、そのチェックの。夏の制服ですよね。先生に合うサイズ、あったんですか？」
　熊先生はしどろもどろになって、しっしっと追い払うように手を振った。
「う、うるさい！　ほら、呼ばれてるぞ。早く行け！」
「はーい。楽しみにしてますよ、先生！」
　

　何年か前と同じように、敬子はキャットウォークを歩く。数年の月日は、自分をどう変えただろう。そんなことを思ったりしながら。もっとも、着こなし方は当時のまま。
「ポイントはアレだ。男子ベストとネクタイか？　私、女子制服の赤のあの襟似合わなくてなー。可愛いとは思うんだが。ネクタイは私物だからたまに柄変えたりして遊んでたな。男子みたいだなんて言うなよな。スカート履いてるし、女子制服のリボンならほら、髪に結んでるから大丈夫だ。問題無い」
　敬子はキリッといい笑顔。
　その場でひとつターンをすれば、髪に結んだ赤いリボンがふわっと揺れる。
　黒のタイツに包まれたふくらはぎも格好良い。男子にも女子にも好かれるタイプかもしれない。
「靴はそう言えば当時からショートブーツ系だったな。――身長の量増し？　売られた喧嘩は高価格買い取り中だぞ」
　カラカラ笑ってローキックすると、敬子はくるりと踵を返した。

●アダルト：エントリーNo.16 ゼシカ・ホーエンハイム

　神は、時に試練をお与えになります。
　けれど神は乗り越えられる試練しか与えません。ええ、ですからきっと大丈夫。
「今日も綺麗ー！」
　そんなふうに、若菜さんも応援してくれていますもの……。

「私がトリエンに？　いやですわ、一介のシスターなのに……」
　『出場おめでとう』のカードを見たとき、彼女ははじめそう思った。
「ですが、これも神の思し召し。この試練を乗り越えよとの啓示に違いありません。不肖ゼシカ・ホーエンハイム、トリエンに出場させて頂きます」

　こうして、麗しき修道服のシスターが、キャットウォークを歩くことになったのだった。

　歩く時はけっして裾を翻らせぬよう小幅で貞淑に。ゼシカはそう心掛けている。
　青い瞳にいつもどおりの柔和な笑みを浮かべて。
「頭巾から垂れた髪はほんのささやかなお洒落ですの」とゼシカは言った。
「本当はひっ詰めて中にしまわなければいけないのですが」
　美しい金の髪を仕舞い込んでしまわないことだけが、ほんの小さな神への反逆。
「黒尽くめの胸元に映えるロザリオの輝きが美しいでしょう？　お集まりの皆様、神は、時に試練をお与えになります。けれどそれは必ず乗り越えられる試練なのです……」
　胸元で手を組み合わせ、ゼシカは神と人への愛を滔々と語る。
「皆様も悩み事がありましたら是非星ヶ丘教会へお越しください。
　貴方に神のご加護を。
　――アーメン」