寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

第２部　第３幕　アダルトパート

●アダルト：エントリーNo.01　磴琥珀

「まさかアダルトパートの一番手とは」
　磴琥珀はネクタイを緩めながらつぶやく。
　紫色に染めたハネ毛に牛乳瓶のような眼鏡が特徴の琥珀に会いたければ、シーサイドタウンのキャットロードにあるちいさなお店、パワーストーン専門店「幸」にいけばいい。たいがいはそこで、色とりどりの石たちに囲まれながら、ブレスレットやストラップなんかを作っている。
「制服ですか、高校に通ったことが無いので、持ち合わせが無いのですけど大丈夫でしょうか？」
　案内係の女の子に尋ねると、貸し出しもあるから大丈夫とのこと。
「おや、レンタルできるのですか？　それでは気兼ねなく着用いたします」
　冬服を選び身に着ける。
「……ふむ、夏に冬服とは少し暑いですね」
　ブレザーを脱ぎ、すこし着崩すと、思いのほか制服はしっくり馴染む気がした。
「……ふぅ少しだけ解放された感じですね」

　キャットウォークを歩く。
　琥珀が登場した途端、これまでの学生とは違う大人の色気――アダルトな魅力に、女の子たちのため息が広がった。それもそのはず、瓶底眼鏡に誤魔化されているが、琥珀は185センチと長身でスタイルもいい。その上、履きなれている風のよく磨かれた革靴がまた、大人の魅力だ。
　琥珀は、セピア色の世界の住人が極彩色の世界に紛れ込んでしまったかのような照れくささを感じ、ぽりぽりと頭を掻いた。
「あはは、これは照れますねぇ」
　ふだん、制服などというものとは縁遠い生活を送っているが、こうして決められたものを着て、決められた時間に学校にいく学生さんというのは、ちょっと窮屈なような気もするし、それでいてなかなかよくやっているものだな、とも思う。
　よく分からないがこういうものかな、と、歩きながら軽く手も振ってみた。
　誰だか知らない女の子たちが、手を振りかえしてくれるのが、妙に微笑ましい。

「着こなしポイントは――前を開けたベストですかね？　少しだけ開放感を演出させていただきました」
　もう少しだけネクタイを緩める。本人は何も言わなかったけれど、きっと、右手の袖からのぞくターコイズブルーのブレスレットも、彼らしさのひとつなのではないだろうか。
　コメントを、と求められると、琥珀はまた照れくさそうに頭を掻いた。
「三十になって制服を着られるとは思っていませんでしたが……有意義な時間をありがとうございました」

　――これはなかなか貴重な経験でしたね。いったい誰が優勝するのか少し楽しみです。
　琥珀はそう思いながら、舞台袖へと踵を返した。

●アダルト：エントリーNo.02　鹿嶋洋美

　２４歳、鹿嶋洋美おねーさんは、よくわからないままステージ上にいた。
　ジニー・劉とお祭りを楽しんでいたはずだったのに。
　途中で迷子になってしまって、実行委員の腕章をつけた子に声をかけたら、『出場おめでとう』の紙持ってますね、さあさあ、とばかりにここに引っ張り出されてしまったのだ。
　……ちょっと、泣いちゃいそうだ。

（……何でこんな所でこんな女子高生の格好で歩く嵌めに……）
　さっき、係の子に掛けられた言葉を思い出し、またちょっとヘコむ。
（違和感ないって褒め言葉じゃないよ……もう２４なのに……）
　恥ずかしいったら、恥ずかしいったら……。
　すこし俯き加減に歩いていたら、視線の先に、ジニー・劉の姿を見つけた。
　咥え煙草を落としそうな勢いで、あんぐり口を開けている。
（あ、劉さんだ……私ほんとだめだなぁ、また勢いだけで迷惑かけちゃった……こんなんじゃ確かに高校生以下だよね……よし！　せめてこのコンテストくらいはきっちりやろう！）
　そう思って、胸を張って歩きだしたときだった。
「ガンバレー超セクシームラムラスルー」
　めちゃくちゃ棒読みの、やる気のない声援。
「んもー！　劉さんっ！」
　思わずキャットウォークの上から怒鳴ってしまう。
（ムラムラするって……ムラムラするって……そりゃ、劉さんにムラムラされたら女としては本望……いやいや、そんなはしたない……でも今日はデート？　みたいなものだったわけだし？　……っていうか、劉さん、こーいう格好好みなのかな……）

　頭のなかでそんなことがぐるぐるとまわり続け、結局アピールもコメントもしないで、キャットウォークを歩き終えてしまった洋美を、ジニーは無事確保した。
「……ったく、世話が焼けるぜ。ま、あんたらしいけど……な」
　

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寝子高制服☆トリエンナーレ！

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