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- 00月00日生 00歳
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寝子高制服☆トリエンナーレ！
●私服：エントリーNo.14 エレノア・エインズワース
「ふ……」
パンフレットを開き、そこに入っていた『出場おめでとう』のカードを冷たい瞳で破り捨てようとして、エレノア・エインズワースはふとある考えが頭に浮かび思い留まる。
「制服トリエンナーレと銘打った出し物の最優秀賞が私服……なんて皮肉な結末を拝みたいものです。ふふふ」
おおよそ彼女の人生に於いて、『皮肉な結末』という言葉のなんと甘美なことか。
おそらく、もともとは制服を趣旨としているであろうこの催しにおいて、制服以外の装いでトップを取る……その思いつきは、エレノア好みのやや悪趣味な蜜の香りがした。
ゆえに、エレノアは姑息ともいえそうな――けれど賞を獲りにいくなら至極まっとうな――作戦に出た。
審査員各人に合わせてのアピールである。
照れや恥じらいなどとは無縁の堂々とした歩みで現れたエレノアは、まずはすっと泉先生に視線を送った。
「私の辞書に流行という言葉はありません。
自分が価値を見出した物しか身に付けません。
私の装いに他人の感性が入り込む余地なんてないんですよ」
彼女の言葉に、泉先生はすこし感心したように身を乗り出す。エレノアの目論見通り、彼女の主義は泉先生の感性に響く部分が少なからずあったからだ。
「私が好んで用いるテーマは『退廃美』です。
事物はそれらが崩壊する瞬間が一番美しく、そこに至るまでを想わせる過程は情趣に満ちている。
私の根幹を為す信条です。
例えば真っ新な雪原を泥塗れの靴で踏み躙る喜び。
例えば屋外に放置した人形が苔むしていく様を眺める愉しみ。
この服装はそうした趣が下地なんです」
くす……とひとつ笑みをこぼす。
泉先生は落ちた。その確信があった。
そこで、エレノアはあずさ理事長にアピール先を変える。
「黄土と紫の色合いは不健全さを、目の粗いカーディガンは不安定さを、手袋と靴は貴族的な型の物を使うことで不道徳さを表しているわけです」
さらに、久保田先生に向かって少女らしく微笑み。
「この日傘もこだわってます。
翅が崩れたモノクロの蝶と薔薇の意匠は爛熟に通じる愛しいモチーフです」
揺れるチェックの大きなリボン。そこだけが、エレノアにひとかけら残された甘く純真な部分のよう。毒入りの砂糖菓子――そんな例えが、あるいはエレノアには相応しいだろうか
最後に、一番感性の合わなそうな桐島先生へ流し目を向け、
「私の感覚を理解出来ない方もおられるでしょうが、着こなしへの熱意を『理性的かつ公平に』評価出来るよう、こうして服装とテーマの対応を整然と語ってみせました。皆様いかがでした？ ふふ」
と、やや挑発的な言葉で締めた。
最後の台詞は、好き嫌いでの審査を封じるための、エレノアの策だ。
「さあ、先生方、『理性的かつ公平に』どうぞ審査なさってくださいな。
結果を楽しみにしています――」
●私服：エントリーNo.15 十条寺 達磨
モッズ、と呼ばれるライフスタイルがある。
５０～６０年代にイギリスの若い労働者を中心に支持されたスタイルで、洒落ていてどこかへそ曲がり。そこには男を痺れさせるナニカがあるようだ。そんなモッズスタイルのひとつに、フロントを無駄に多数のライトやミラーで装飾したスクーターがある。
私服パート、トリを務める十条寺 達磨は、そんな風に派手にカスタムしたイタリア製スクーターに乗り、颯爽とステージに登場した！
観客席からはちょっとした悲鳴や、危ない、なんて声も聞こえたけれどなんのその。
ドリフトをしつつ急ブレーキできっちり止まり下り立った達磨は、どこかのファッション誌から抜け出て来たモデルみたいに洒落た歩きでキャットウォークを歩く。
先ほどの悲鳴は、いつしか嘆息に変わっていた。
「んー、まぁ、常に登校してる時もほとんどガッツリ制服着た事が無いから私服と制服の境界が曖昧な気がするかな？ 常に勝負服！ って感じだし。今日のテーマは『７０’sファッション（レトロ、モッズ系）』」
彼のコーデは細部までこだわりがある。
インナーは、大きなユニオンジャック柄。パンツは、ちょっとレトロでモダンな縦縞模様のモノを、高めで高品質なユーズドを扱ってるネットサイトで購入。ベルトは大き目のバックルで、モッズムーブメントの象徴であるイギリス空軍の国籍マーク、赤と青の蛇の目のラウンデルを使用。ロングマフラーはモスピンクのボーダー柄で、コートは、裾や襟、袖口にファーの付いたモスグリーン。
眼鏡と手袋は、両方ともノーブランドのシンプルな物をチョイス。帽子と靴は、この服装に合うようにという基準で選んだ。
コートの裏地のオレンジ色まで隙がなく格好良すぎて、ちょっと気絶してしまいそう。
会場を包むのが大きな歓声ではなく、ほう……っという嘆息なのは、名誉と受け止めていいだろう。
ところが、キャットウォークの端で達磨がいい声で決めたセリフが、
「貴子！ 愛してるぜ！」
というお堅い風紀委員長に向けたものだったので、会場には別の意味で嘆息が広がったのだった。
「ふ……」
パンフレットを開き、そこに入っていた『出場おめでとう』のカードを冷たい瞳で破り捨てようとして、エレノア・エインズワースはふとある考えが頭に浮かび思い留まる。
「制服トリエンナーレと銘打った出し物の最優秀賞が私服……なんて皮肉な結末を拝みたいものです。ふふふ」
おおよそ彼女の人生に於いて、『皮肉な結末』という言葉のなんと甘美なことか。
おそらく、もともとは制服を趣旨としているであろうこの催しにおいて、制服以外の装いでトップを取る……その思いつきは、エレノア好みのやや悪趣味な蜜の香りがした。
ゆえに、エレノアは姑息ともいえそうな――けれど賞を獲りにいくなら至極まっとうな――作戦に出た。
審査員各人に合わせてのアピールである。
照れや恥じらいなどとは無縁の堂々とした歩みで現れたエレノアは、まずはすっと泉先生に視線を送った。
「私の辞書に流行という言葉はありません。
自分が価値を見出した物しか身に付けません。
私の装いに他人の感性が入り込む余地なんてないんですよ」
彼女の言葉に、泉先生はすこし感心したように身を乗り出す。エレノアの目論見通り、彼女の主義は泉先生の感性に響く部分が少なからずあったからだ。
「私が好んで用いるテーマは『退廃美』です。
事物はそれらが崩壊する瞬間が一番美しく、そこに至るまでを想わせる過程は情趣に満ちている。
私の根幹を為す信条です。
例えば真っ新な雪原を泥塗れの靴で踏み躙る喜び。
例えば屋外に放置した人形が苔むしていく様を眺める愉しみ。
この服装はそうした趣が下地なんです」
くす……とひとつ笑みをこぼす。
泉先生は落ちた。その確信があった。
そこで、エレノアはあずさ理事長にアピール先を変える。
「黄土と紫の色合いは不健全さを、目の粗いカーディガンは不安定さを、手袋と靴は貴族的な型の物を使うことで不道徳さを表しているわけです」
さらに、久保田先生に向かって少女らしく微笑み。
「この日傘もこだわってます。
翅が崩れたモノクロの蝶と薔薇の意匠は爛熟に通じる愛しいモチーフです」
揺れるチェックの大きなリボン。そこだけが、エレノアにひとかけら残された甘く純真な部分のよう。毒入りの砂糖菓子――そんな例えが、あるいはエレノアには相応しいだろうか
最後に、一番感性の合わなそうな桐島先生へ流し目を向け、
「私の感覚を理解出来ない方もおられるでしょうが、着こなしへの熱意を『理性的かつ公平に』評価出来るよう、こうして服装とテーマの対応を整然と語ってみせました。皆様いかがでした？ ふふ」
と、やや挑発的な言葉で締めた。
最後の台詞は、好き嫌いでの審査を封じるための、エレノアの策だ。
「さあ、先生方、『理性的かつ公平に』どうぞ審査なさってくださいな。
結果を楽しみにしています――」
●私服：エントリーNo.15 十条寺 達磨
モッズ、と呼ばれるライフスタイルがある。
５０～６０年代にイギリスの若い労働者を中心に支持されたスタイルで、洒落ていてどこかへそ曲がり。そこには男を痺れさせるナニカがあるようだ。そんなモッズスタイルのひとつに、フロントを無駄に多数のライトやミラーで装飾したスクーターがある。
私服パート、トリを務める十条寺 達磨は、そんな風に派手にカスタムしたイタリア製スクーターに乗り、颯爽とステージに登場した！
観客席からはちょっとした悲鳴や、危ない、なんて声も聞こえたけれどなんのその。
ドリフトをしつつ急ブレーキできっちり止まり下り立った達磨は、どこかのファッション誌から抜け出て来たモデルみたいに洒落た歩きでキャットウォークを歩く。
先ほどの悲鳴は、いつしか嘆息に変わっていた。
「んー、まぁ、常に登校してる時もほとんどガッツリ制服着た事が無いから私服と制服の境界が曖昧な気がするかな？ 常に勝負服！ って感じだし。今日のテーマは『７０’sファッション（レトロ、モッズ系）』」
彼のコーデは細部までこだわりがある。
インナーは、大きなユニオンジャック柄。パンツは、ちょっとレトロでモダンな縦縞模様のモノを、高めで高品質なユーズドを扱ってるネットサイトで購入。ベルトは大き目のバックルで、モッズムーブメントの象徴であるイギリス空軍の国籍マーク、赤と青の蛇の目のラウンデルを使用。ロングマフラーはモスピンクのボーダー柄で、コートは、裾や襟、袖口にファーの付いたモスグリーン。
眼鏡と手袋は、両方ともノーブランドのシンプルな物をチョイス。帽子と靴は、この服装に合うようにという基準で選んだ。
コートの裏地のオレンジ色まで隙がなく格好良すぎて、ちょっと気絶してしまいそう。
会場を包むのが大きな歓声ではなく、ほう……っという嘆息なのは、名誉と受け止めていいだろう。
ところが、キャットウォークの端で達磨がいい声で決めたセリフが、
「貴子！ 愛してるぜ！」
というお堅い風紀委員長に向けたものだったので、会場には別の意味で嘆息が広がったのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年09月30日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年10月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年10月07日 11時00分
