秋の遠足　アスレチックで遊ぼう♪｜リアクション

秋の遠足　アスレチックで遊ぼう♪

☆秋晴れの遠足

　ジューッ……
　いつもより騒がしい物音とともに、台所からいい匂いが漂ってきました。
「ん……」
　目を覚ました佐藤瀬莉は、今日は遠足の日だと気づきました。
（晴れてるといいな）
　６年生の彼女にとって、小学校最後の遠足。
　どきどき……あ、そうだしながらカーテンを開けると、外は見事な秋晴れでした。
「よかった」
　パジャマを脱いで着替えようとして、瀬莉は、ふといいことを思いつきました。

　１年生の菊地まなにとっては、初めての秋の遠足です。
　寝子島を離れて島外の自然公園へ。
　とっても楽しみにしていたのですが、あいにく１、２年生はバスでの移動でした。
（う～ん……あたまいたい……きもちわるい、バスよいが）
　まなはバス酔いするタイプだったのです。
　ふらふらになりながらも、ある理由で声が常に極端に小さいまなは、具合が悪いのをみんなに伝えることができませんでした。
　どうにか自然公園についてほっとしましたが、なかなか気持ちの悪さが治りません。

　電車で自然公園にやってきた５年生の暁桜逢莉は、張り切っていました。
　明るくはきはきした逢莉は、班長に推薦されていました。
　下級生たちが降りてきたバスへ迎えに行きます。
「菊地まなちゃん、いますか？」
「……ぃ（はい）」
　夜明け前の藍色の髪と朝焼けの菫色の目をしたお姉さんの呼びかけに、まなはやっとの思いで返事をしました。
　小さな声ですが、ハープ演奏が得意なだけあっていい耳を持っている逢莉は、しっかり聞きつけました。
「わたくしが班長の暁桜逢莉です。よろしくお願いします」
「……ぃ（はい、こちらこそ）」
　礼儀正しく挨拶する逢莉に、まなは頭を下げながら小さく返事をします。
（上級生についていけばいいんだ？）
　優しそうなお姉さんを見て少し安心しました。
　相変わらず気分は治っていませんが、どうにかなりそうです。

　

このページにイラストを設定する