寝子島美味しい物フェスタ！｜リアクション

寝子島美味しい物フェスタ！

　一方、紙袋を抱えた凛は、『こねころころ』を写真に収めている夏朝と、猫の形をした饅頭らしき物を食べている悠、信彦の屋台で買ったであろうずんだ餅を食べている都と出くわした。運が良かったのか、彼女が食べている物は普通のずんだ餅のようだ。
「それも、美味しそう」
「うん。……とても美味しいよ」
　一通り写真に収めた夏朝は、都の問いに対し、１つを食べて幸せそうに頷いた。よく見ると、背中に中身が書いてあり、わかりやすい。凛も「これもいいな」と屋台の場所をパンフレットでチェックする。そして、悠が食べていた『ねこまん』についても聞いてみることにした。
「それは、どんな感じ？」
「えっ？！　こ、こんな感じです……」
　悠は饅頭を半分にわって見せた。バターと醤油のどこか懐かしさを思わせる香りが鼻を擽る。白餅に沢山の鰹節という組み合わせも思わずヨダレが出そうになった。
　悠が気になったのは凛が持っていた紙袋の中身。僅かに見えた猫の形に夏朝も興味を示す。
「これもねこまんて言ってたけね」
「普通の……肉まん？」
　あんまんだったらなぁ、と思いつつ都がぽつり。食べてみる？　と凛に誘われ、悠は恐る恐る受け取って食べてみた。ジューシーな肉汁が舌で蕩ける、とても風味豊かな肉まんだった。
（美味しい。けど、中身の肉が気になる……。まさか、猫？！）
　食べながら嫌な想像をしてしまい、思わず固まってしまう悠。しかし、何かに気づいた夏朝が紙袋に書かれた文字を読んだ。
「これは、普通の肉まんです、って書いてあるよ？」
　猫のパペットを操りつつ言う夏朝に、悠は「本当？」と何かにすがるような真剣な眼差しを向けるのだった。

（うーん、いいリアクション見せるよねぇ、みんな）
　信彦はデジカメのデータを見ながらニコニコと笑っていた。『ロシあんまき』は好調なのか、わさび入りの物を食べた人の表情が結構写真に収められていた。
　そして現在。ジーナが食べている所だが……今度もまた、わさび入りではなかったようだ。彼女はこんなふうに感想を残す。
[○：意外性はないが、上品な口あたり。お茶が欲しくなる所]
「そ、そうかそうか……」
　わさび入りが当たったらそれはそれでリアクションが……と期待していた信彦は、真面目（と、彼は受け取った）なコメントにどう返そうか少し悩んでしまうのだった。

　休憩に入った治は丁度『寝子饅頭』を購入したリラと話をしている所だった。香ばしい香りとしらすが特徴の饅頭を吟味するように食べるリラ。そんな彼女を真剣な表情で見守る若女将。二人の様子を手の空いた板前さん達も見守る。
「いかがですか？　私達の自信作ですが……」
「寝子島の特産品、しらすの新たな可能性を見た気がします。確かに同じものばかりを押していては、飽きられてしまいますが……」
　リラの言葉に治は頷く。女将として商品開発に関わる以上、消費者の意見は真剣に聞いていたいものだ。
「サンマを焼いた時の香ばしさもありながら独特の臭みが消えている。このあたりこそ最大の特徴。中々美味しゅうございます」
　出されたお茶を飲みつつ食べ、にこりと笑うリラ。彼女の言葉に手応えを感じた治達【薫風常葉】の一同は、互いに顔を見合わせて頷きあった。

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