ヴァンパイア・アンド・ウルヴズ｜リアクション

ヴァンパイア・アンド・ウルヴズ

　７　

　――狼人間と吸血鬼は戦う運命にある……でもそんなの関係ねぇ！　
　――僕は愛する人と一緒になるために行くだけだァ！

　　　　　　　　　　　　　　　★★★

　狼がこちらに走ってくる――
　そう認めてから数秒後、狼はタカコ（北風貴子。ＩＦの世界において名字はない）の正面まで来ると急ブレーキをかけて停止した。ぶんぶんとしっぽを振っていた獣は、瞬く間に少女――カイリ（伊賀解理。以下略）の姿になってタカコに言った。
「というわけで今日も来たぞタカコさん！」
「……どうして居場所がわかったの？」
　１ミリも驚いた様子を見せず、タカコは冷たい目をカイリに向けた。そこからは、辟易したような、諦めたような感情も見て取れる。というのも、カイリと不意に会うのは１度や２度や３度ではないからである。
　面倒臭いから隠れる、という選択を取る性格でもないタカコは、行先を決めないままに住処から２０ｋｍほど離れた地を歩いていた。今日はカイリには会わないだろう、と思いながら獲物を探していたらまさかの登場だ。
「ふふふ、月が出てる時のイヌ科の鼻をなめてはいけませんよ」
　カイリは得意気に含み笑いをして、それからそれぞれの目と口を三日月型にしてにたりと笑った。
「てことで……ボク　アナタ　ヨメニスル」
「はい６７５回目」
「僕がタカコさんに一目惚れしてから、そんなに６７５日も経ったんだな」
　６７５回もプロポーズ（？）をして振られているのに、カイリはやけに嬉しそうだ。
「違うわ。一日に何度も言ってるからその３分の１くらいよ」
「そっか。そうだよね、一日一回で足りるわけないもんね」
　笑顔を含めた彼女は、耳と尻尾を出してますます嬉しそうにした。そこで、悲鳴が聞こえて２人は反射的にそちらを向いた。同時に、女性が猛スピードで横切っていく。それを、狼が追いかけていった。
「狼……」
　呟いたタカコは、本能のままに走り出す。ついてくるカイリに、彼女は言った。
「吸血鬼と狼人間は争う間柄よ。こうして、私が狼人間を倒したくなっているみたいにね」
「そうか、頑張って争ってくれ。僕はタカコさんを愛する事に忙しいから種族同士の争いには興味ないよ。……そういえば、タカコさんは僕を襲おうとしないよね」
「…………」
　タカコは無言を貫いた。
「襲ってくれてもいいんだけどね。女同士だからって気にしないし。種族的に禁断の恋確定だから、性別なんて瑣末なことだしね」
　楽しそうなカイリの台詞の後半は、何度か聞いたことがあるものだ。その後に続く言葉がいつも同じわけではないが、タカコにはそれが自然と予想できた。
「そんなしがらみ、全部関係ない？」
「そう。知った事じゃない」
　前に回り込んできたカイリは、タカコと視線を合わせてくる。立ち止まったことで、人と狼は遠ざかっていった。
「僕はタカコさんを愛してる。ずっと一緒にいたい。それだけだよ」
「…………」
「てことで……ボク　アナタ　ヨメニスル」
　肌が泡立つ。スイッチが入ったのを察し、タカコは逃げようと蝙蝠に変身しようと――
「……！」
　だが、３１４回目にして逃げられなかった。タックルを受け、地面に押し倒される。
「癖は見抜いてるから先読みしたよ。狼の身体能力に愛という名のパフが加わればこんな事もできるのですよ」
　カイリは妖しい笑みを浮かべる。
「それに……タカコさん、そんなに逃げる気なかったでしょ？　つまりはそういう事ですよね？」
　タカコは何も言わなかった。どう解釈するのかはカイリの自由だ。ただ真っ直ぐに彼女を見つめる。
「てことで……ボク　アナタ　ヨメニシマス」
　本日３回目の宣言をして、カイリはタカコの服に手をかけた。
　タカコはされるがまま――否、カイリの肩に噛みついた。静かに血を吸っていく。
「た、タカコさ……」
「ヨメになるのは、カイリさんの方よ」
　カイリの眼鏡が落ちる。
　その後のことは、神のみが知る――

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あとがき

担当マスター：沢樹一海
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大変お待たせいたしまして申し訳ございません。
ヴァンパイア・アンド・ウルヴズのリアクションをお送りさせていただきます。

らっかみでは非常におひさしぶりな執筆でしたが、
世界観を結構勝手に決められたのもあり、のびのびと書くことができました。
次回シナリオも急ピッチで執筆を進めてまいります。
（先日眼鏡が壊れたのですが裸眼の方が執筆が進むかも……）

それでは、また次回シナリオでお会いしましょう。

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