＜零神探訪＞ぬばたまの絶対零秘史（ブラック・ヒストリア）｜リアクション

＜零神探訪＞ぬばたまの絶対零秘史（ブラック・ヒストリア）

●エピローグ：寝子島1370秋

　あれからしばらくの日常を経て、秋が来た。
　あの日。
　落神神社に戻ってきた仲間たちの中に、ユチェンの姿はなかった。
　きっと神魂のご配慮で、自分の街――紅燈火街（レッドランタン・タウン）――に戻ったのだろうと思っていたけれど、実際に確かめられたのはそれからひと月以上経ってからだった。
「元気かな」
　寝子島はシーサイドタウンの一角にある雑居ビル、青いドアを開けた先にあるR&R Agencyの事務所。
　久しぶりに遊びに来た伏見真は窓の外を眺め見て頬杖を突く。
「きっと元気だと思うよ」
　同じく遊びに来ていた音海なぎさがお茶を啜りながら答える。
　空にはぽっかり羊雲。
　木立もすっかり秋の色。
「何の予告もなしに飛ばしよるから突然の別れもあるかなって予感は、あったけど」
　せめて、と真は目を瞑る。
　口ずさむのは、あの時の歌。
　覚えていてくれたら、どんなにか嬉しい。
「よっ、と」
　ドアを足で開けて入ってきたのは志波武道と夜海霧楓。
「やっほー☆　元気？」
「哀愁漂ってるとこ邪魔するぜ」
　武道は両手で本の山を抱え、楓は片手に絵葉書を持っている。
「どうしたの」
　腰を浮かした梨香のデスクの上へ、武道がよいしょ、と置いたのは、寝子島書房刊の『寝子暦零年の大妖怪大戦』、その数約２０冊。
「本日発売☆　買い占めてきちゃった☆」
「落神伝説にある謎の妖怪や怪物って半分は俺らの事だよな。その本、読んでみたら、ほぼ俺ら大活躍な冒険活劇って感じだったぜ。印税貰いたいくらいだ」
「そんなに？　記念写真代わりに、みんなに送りつけようかしら」
　梨香が笑う。
「そ～思うかと思ってさ。あ、領収書コレね！」
　武道は『R&R Agency』宛の領収書を大量の書籍の上にぱんと置いた。
「しっかりというか、ちゃっかりというか。それとも、さすが、というべきかしらね」
　呆れたように肩を竦める梨香。
　楓はくつくつ笑って、それから絵葉書を真に渡す。
「ユチェンからだ」
「ほんま？」
　真は受け取り、手のひらほどの紙片に目を走らせた。
　裏には赤い提灯が並ぶ懐かしい街並みの写真。表には短い文字列。
「……中国語や」
　むぅ、と頬を膨らませる真。
　貸して、と、リンコが翻訳ソフトにかけてくれた。

　お元気ですか。
　オレは元気です。
　鍛錬、続けています。
　みんなに、また会いたいです。
　P.S．爺爺もメイユも皆も元気です。

「会いたいなあ」
　零れる。
　独り言。
　のつもりだった。
「行く？」
　梨香が思いもかけないことを言う。
「行くってそんな簡単に？」
「旅費ぐらい出すわよ。なんてったって私たち『今』を救ったんだもの」

　誰にも知られない物語。
　何も起こっていないってことの偉大さ。
　物語は続く。続いていく。
　こんなことが、この世には、あるんだ。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます。いつもながら遅くなりまして申し訳ありません。
５話に渡って続いて来た＜零神探訪＞シリーズ、
過去を見、零神を探訪したここで、ひとまずの完結となります！

ネタバレになりますので、つづきは読了後に……。

さて。

らっかみ！　初期のころから、ずっとやってみたかった過去を訪ねる話。
ドラ〇もんの映画などにあるような、
過去で何らかの事件を解決し、そのことが、未来の何処かに小さな爪痕を残している……
という話に憧れていまして、今回まさに、みなさんのアクションによって
そのような話になっていきました。（察して頂いた方も！）

わくわく、していただけたら有難いなあと願っています。

　【入手】天界の鏡（必要になったとき、鏡は月にいる絶神の姿を映し出す）

　【入手】寝子島書房刊の『寝子暦零年の大妖怪大戦』
　　　　　……今シナリオにご参加いただいた方全員に坂内梨香が送付しました。

　【入手】R&R Agency からの報酬（Ｒ＆Ｒエージェントとしてご参加の方）
　　　　　高校生であればしばらくお小遣いには困らないくらいの額。

　※報酬は、今回は参加なさらなかったものの
　　過去のシリーズにご参加いただいた方全員へ、R&Rより支払われました。

　※ユチェン君は、紅燈火街に帰りました。

＜零神探訪＞紅燈火街から約１年に渡り、
あちこちいっしょに冒険してくださったみなさん！
今回ご参加になっていない方も含め、誠にありがとうございました！

後日談～といいますか、打ち上げ的な話を
後日出したいと思っています。（ユチェン君がどうなったのかとか）
その際はお付き合いいただけましたら幸いです！

それでは本当にありがとうございました。またお会いしましょう。笈地でした。

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