占い少女はいつも腹ペコ｜リアクション

占い少女はいつも腹ペコ

◆夢はでっかく世界規模！

「君が占い少女のイムイムか……初めまして。僕は河島澪」
「ようこそなのだ！　まあどうぞ掛けてくださいなのだ！」
「ああ。ありがとう」

　テントの中、イムイムにそう促されて椅子に座ったのは河島澪だ。澪はイムイムに桃を差し出すと、口を開いた。

「野菜が好きだと聞いたので桃を買ってきたよ。果物も好きかい？」
「もちろんなのだ！」

　瑞々しい桃に目を輝かせて、イムイムはそれを受け取る。そうしてどこからか取り出した紙皿の上に置くと、ナイフで丁寧に切り分け始めた。

「内容は……『どうしたら世界征服できるか』で頼むよ」
「ふむふむ……ん！？　世界征服！？」
「難しいかい？」

　イムイムは桃の一切れを早速食べながら、その内容を真剣に聞いている。時折押し黙るとモグモグ口を動かしているのはご愛敬だ。澪はイムイムの様子を見ながら、こう続けた。

「どうしても難しいなら『世界征服のためのパートナーはできるか』でもいいよ」

　それを最後まで聞くとイムイムはゴクリと桃を飲み込み、なんだか神妙な面持ちになる。

「いや……わかったのだ」

　そうして懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。澪がカードを繰るイムイムの手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「んむー……んむむむむー……」

　澪が若干手持ち無沙汰になり始めたとき、イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。逆さのカードばかり並ぶテーブルに改めてイムイムは唸る。

「こういう結果になるのも珍しいのだ……世界の意思を感じるのだ……でも安心してほしいのだ！　肝心のところでは勝ってるのだ！　未来のミオミオは世界征服に向けて確実に進んでいるのだ！」
「へえ。それなら良いんだけど」
「パートナーについても一緒に観たのだ。逆さまの隠者……内気だったり、消極的だったり、あまり人を信じない人なのだ。イムイムはそんな感じの人がミオミオの野望についてきてるのを見たのだ。身近にそんな感じの人がいないか？」

　それを聞くと、澪は自分の知り合いの顔を思い浮かべて頷いた。

「だとしたらその人と仲良くしてみると野望に一歩近づけるかもしれないのだ。近づけなくても友達が増えると嬉しいのだー」

　ここまで言うと、イムイムはミネラルウォーターをごくごくと飲み始めた。どうやらこれで占いは終わりらしい。

「なるほど、さすが占い少女だね。参考になったよ」
「良かったのだ！」

　すると澪の唇はゆっくりと弧を描く。その手はイムイムの小さな手を取り、その顔はイムイムの瞳をじっと見つめながら近づいていく。

「うおお！？」
「君と出会ったことで、世界征服に一歩近づけた気がするよ」

　イムイムの反応にまた微笑むと、澪はその手をするりと解き席を立った。

「また会おう、イムイム」
「う……うむ！　どういたしましてなのだ！　また会おうなのだー！」

　澪の背を見送りながら、イムイムはホッとした様子で呟く。

「魔王様みたいな人だったのだ……」

　そうして落ち着く間もなく、次に控えていた客の声がした。

「お！？　次の人、どうぞなのだー！」

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