【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん｜リアクション

【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん

　あちこちで戦闘の小休止が目立ち始めた。
盛大にスライムを躍り食い始めるほしびとたち。
　うっかり敵の的となりはじき飛ばされる者もいたが、夏朝は彼らを律儀に救出していた。
　サルベージ能力のため、戦線は崩れることなく維持されていた。
　
　戦輪でスライムをはじき飛ばしていた夏朝は、スライム食の様子をちらりと見る。
（おいしいのかな？）
　水路を流れてくるエメラルド色の団子。
　白い皿にのせてみると、いかにも涼しそうだ。
「･･････倒して食べてみよう」
　箸を取り出し、一切れ口に運ぶ。
　ゆっくり咀嚼する。
　その眉がふいに曇った。
　ぽとり。取り落とした箸が、水路を流れていく。
「こ、これは……」
　鼻先に手をやり、涙をこらえるしぐさをする夏朝。
　健康食品の青汁スライム。
　聞いたことのない薬効成分がしこたま入っているらしい。
　そのせいだろうか、味に気を使った形跡はみじんもない。
　むき出しの青臭さが、舌と鼻を直撃する。
　ひたすら野草のエグさがのどをつく。
　食べにくいことこの上ない。
「ま、まず……もとい、おいしくない……青汁だ」
　直接的な表現ははばかられたのだろうか、遠回りに感想をつぶやく夏朝。

（もう一杯！　は、いらない･･････）

　さすがにこれは無理……と皿を傍らに置こうとする。
　その手がぴたりと止まる。
　この青汁スライムを自分が食べないで、誰が食べるというのだ。
　ほおっておいたら、このスライムが第二階層の水路にあふれ、アヴィケンナが困ってしまうかもしれない。
　それはなんだか、申し訳ない。
　再び皿を手に取り、口に入れる。
「うう……」
　少しは口に入れる人間への配慮とかないのだろうか。
　水路に目をやれば、まだまだ続々と青汁スライムが流れてくる。
　残りのスライムを掻き込んで、夏朝はチャクラムとバケツ片手に立ち上がる。
　戦輪で打ち倒したスライムをバケツに入れ、かたっぱしから食す。
　冷たいうちなら、まだなんとかなるかもしれない。
（豆乳に浸けたりしたら、意外と食べやすくなるかも……）
　悲壮な決意を胸に、夏朝はたった一人の戦場へと向かうのだった。