シーサイドタウン　秋の大サービスキャンペーン｜リアクション

シーサイドタウン　秋の大サービスキャンペーン

「ついにこの日、休みの日がやって来た」

　部屋の中で可愛らしいガッツポーズをしているのは恵御納夏朝だ。
　シーサイドタウンで期間限定で使えるクーポン。これを用いての買い物を夏朝はとても楽しみにしていた。

　クーポンを使える店は事前にネットチェック済みだし、購入したい物、購入しなければならない物等も考え済みである。
　そう。今日という日の為に夏朝は万全の態勢を整えて来たのだ。

「いざ戦場へ……！」

　特に誰かと競うわけでもないので戦場は大げさな筈だが生憎とそれを突っ込む人間はいない。
　夏朝はその不思議なテンションのまま出かけて行くのであった。

　まず夏朝が目指したのは猫グッズを買う時に良く利用している雑貨屋である。
　この店は夏朝が知る中でも指折りの猫グッズ販売店なのだ。新作も良く出る為にちょくちょく様子を見に寄ったりもしている。

　ただ、夏朝は今までに沢山の猫グッズを買っており、既に自室は猫グッズで溢れていると言っても過言ではないくらいには猫グッズが存在している。
　それでも。それでも一つか二つくらいならば……！　葛藤しながらまだ購入していない猫グッズへと手を伸ばす。
　中にいる夏夜が呆れるような声が聞こえたような気がするが、果たしてそれは現か幻か。

（後はろっこん用のねこシールも多目に買っておかないと……）

　夏朝のろっこんである『重く軽く』はシンプルなだけに取り回しが良い能力だが、発動させるのにこのねこシールを必要とする。
　この島では不思議に遭遇する事はけして珍しいと言うわけではない。だから、備えをしておくに越した事はないのだ。

（さて、お次はウェットフードとかを買いに行こう）

　ウェットフードとはキャットフードの一種。夏朝は自室にて内緒で猫を飼っていたりするのだ。
　フード以外にも猫用のおやつやおもちゃ等も買う予定でいる。
　これ等以外は通販を用いて何とかしているのだが、これ等だけは直接見て買いたいという思いから店で直接購入する事にしているようだ。

「えーと……『ねこまんマグロ』と『ササミだニャン』はっと……あ、あった」

　目的のウェットフードの置いてある場所を探す夏朝。
　こうして夏朝の買い物は進んで行く。

　買い物をして荷物が増えた為、夏朝は一旦買った物を自室に置いてから再びシーサイドタウンへとやって来た。
　自室に戻ったタイミングで飼っている猫に食事を上げるのは忘れていない。

「うーん。お腹空いたなぁ」

　夏朝がぐーと鳴るお腹を押さえてそろそろ昼食にしようかと考えていると前の方から遠藤健が歩いて来た。

「お、恵御納さん」
「ん、こんにちわ、遠藤君」

　健の方も夏朝に気付いていたようで向こうから先に挨拶をしてきたので夏朝もまた挨拶を返す。

「今日は買い物か何か？」
「うん。クーポンを使おうと思って」
「クーポンって、あぁ、シーサイドタウンのか」
「うん、それで猫さんグッズとか買った」
「へぇ、相変わらず猫が好きだね。恵御納さんってどんな猫が好きとかあるの？」

　そう健に聞かれたので、あまり長くならないように気を付けながら夏朝は猫について語り出した。
　ちゃんと気を付けていた為にけして長い時間ではない。しかし、だからこそ逆に濃密で面白い話だったとは健の言葉である。

「あ、そうだ。福引とかも引けるんだっけ。後で行ってみようかな？」

　昼食を食べた後も水族館に行ったりと今日一日を満喫した夏朝は、福引がある事を思い出したようだ。
　何が出るかな？　ケーキとかなら今日行ってみるのも良いなと思っていたりして。
　夏朝にとって今日という一日はとても楽しい日になったようである。

このページにイラストを設定する