サマー☆部活動のお時間です！　～文化部編～｜リアクション

サマー☆部活動のお時間です！　～文化部編～

●ＢＬ（ブリティッシュライフ）同好会のお茶会

　横浜にあるイギリス風レストラン。
　そのテーブルで向かい合って座る響蒼留人とマーガレット・ライカー。傍からみたらデートの類にみえるかもしれないが、そうではない。これは『ＢＬ同好会』のお茶会である。
　ＢＬ同好会は、正式な名称はブリティッシュライフ同好会であり、イギリスの文化風俗を知ることを目的とするとても真面目で真っ当な同好会である。

（なんであいつ欠席なんだよ、まったく……）

　蒼留人は心の中でそう呟いた。今日の集まりは３人の予定だったのだが、その１人が来れなくなってしまった。そのため２人でのお茶会となり、微妙な空気になる。会話の糸口を探すのも一苦労だ。

（想定外です。想定外ですね。私としては、男子二人の語らいを目前で鑑賞させてもらい、新作のネタにさせてもらう予定だったのですが……今日の響君は口数が少ないですね。まぁ、これはこれで響君の反応を見るのも興味深いものがあります）

　マーガレットの思惑とは別に、蒼留人の心境も複雑だった。

（姉がいるので女子に慣れてないわけではないが、日ごろのマーガレットの腐女子目線はよく分からないまでも、鳥肌が立ってるのでちょっとやりにくい……）

「せっかく横浜に来たのにな……」
「ええ、彼を含めて３人でお茶会をしたかったのですが……」
「急用が入ったらしい。すごく残念がってたぜ」
「次の機会を願いましょう」
「せっかく準備したんだし、あいつの分も食っちまおうぜ」

　２人がオーダーしたものがテーブルに乗せられる。
　マーガレットのほうにはダージリンティーとトリークルタルト、蒼留人のほうにはスコーン、クロテッドクリーム、ジャム、紅茶が置かれた。蒼留人はスコーンを手にとって一口食べてみる。

「美味いな、このパン。イギリスの飯はまずいって聞いてたんであまり期待はしてなかったんだが」

　そう言いながらジャムやクロテッドクリームをつけて味の変化を楽しむ。マーガレットもトリークルタルトを上品に口に運びながらダージリンティーを堪能する。しかし蒼留人は彼女の食べているものが何か分からなかった。

「なぁマーガレット、お前の食べてるのはなんていうんだ？」
「トリークルタルトです。パン粉で作られたタルトで、たっぷりのフィリングと糖蜜の甘いお菓子です。イギリスの伝統的なお菓子ですわ」
「トリークル？　初めて聞いたぜ……トリークルタルト……ごほっ」

　菓子の名前から姉のことを思い出してしまい蒼留人は思わずむせた。マーガレットは少し心配そうに彼に声をかける。

「響君？　タルトに何か嫌な思い出でも？」
「嫌なモノを思い出しちまったぜ。……ああ、菓子には罪はないな。気にしないでくれ」

　落ち着きを取り戻そうと紅茶を口に含み、スコーンを再び味わう。それから他愛のない話をしながら、お茶会の時間は過ぎていく。

（なんだか二人きりだと調子狂うな……これじゃまるでデートじゃないか）

　これはＢＬ同好会のお茶会であってデートではない。それは分かっているが、どこか気まずさを感じていた。どうにか払拭したいと考えた彼は、あることを思いつく。

「そうだ、写真撮ろうぜ。あいつに見せてうらやましがらせてやるんだ」
「いいですわね」

　横浜の風景が入るように２人の姿を写真に収めた。
　この写真は、ＢＬ同好会にとっても２人にとっても、良い思い出になることだろう。

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