サマー☆部活動のお時間です！　～文化部編～｜リアクション

サマー☆部活動のお時間です！　～文化部編～

●涼しい日と演技の熱

　８月下旬。
　青山絢は今日も演劇部の稽古のために寝子島高校へ向かっていた。

「今年の夏は酷暑だったけど、今日は珍しく涼しい一日になりそう」

　風を感じながら、絢はそんなことを思った。夏の終わりが近づいているのもあるだろう。直射日光もそれほど暑さを感じない。木陰はほどよく涼しくて、今日は快適に過ごせそうだ。
　そう思いながら歩くうちに高校に到着した。折角なので屋上で部員たちと柔軟体操や発声練習などをすることに。

　絢は動きやすいように以前見かけた特売で購入したＴシャツに、寝子高のジャージを合わせている。ちなみにＴシャツは白地にバニーガールが描かれたものである。これを買うつもりも着るつもりはなかったのだが、間違えて持ってきてしまった。他にも水色無地のものや灰色で幾何学模様が描かれたものなどあったのになぜこれを持ってきてしまったのか。
　とはいえ、今更別のＴシャツを取りに行くこともできないので、仕方なしに着ている。ただ意外なことに他の部員からはなかなか好評だ。これには彼女も少し困惑する。

　それはともかく、一通りのメニューをこなしたら、台本をとって稽古を開始する。今練習している演目の内容はスラップスティックコメディ。スラップスティックコメディとは、コメディのなかでも特に体を張った、動きの多いものを指す。絢は改めて台本に目を通す。

（自分の演じる役は……棒術を駆使して大暴れするバニーガール……）

　何の因果か、今着ているＴシャツと役がマッチしてしまった。さっそくモップを渡されて、軽く動きを確認してから、とりあえず台本に書かれた前口上などを堂々と読み上げる。しかし読み上げながら、なぜこの役がバニーなのかと理解に苦しむ。
　だが演じているうちに役に入り込むのか、動きも表情もだんだんセクシーかつキレのあるものになっていき、セミロングの髪を振り乱し、汗を飛び散らせて熱演する。モップが何度も空を切りながら、まさに大暴れという言葉がふさわしい動きを見せる。
　最後にはほぼ独演会のような状況になっていた。

「はぁ……はぁ……」

　激しく動いたせいで息が切れる。しかし見事に演じきった彼女の表情は妖艶そのものだった。

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