サマー☆部活動のお時間です！　～文化部編～｜リアクション

サマー☆部活動のお時間です！　～文化部編～

●夏のスイーツ

　水上桜は今年の夏休みを振り返る。
　前半は家族のいるニューヨークに行って、帰国したのはついこの前のこと。気づけばこちらは夏も終わろうとしている。そして桜はちょっと用事があって寝子島高校へ顔を出した。とはいえ大した用事でもないのですぐに済んだ。

（図書室にでも寄ろうかな）

　そんなことを思いながら校内を歩いていると家庭科同好会に所属している子に声をかけられた。どうやら今日は同好会が活動しているらいしので、久しぶりに顔を出そうと思って家庭科室へ。彼女は水泳部との掛け持ちなので、水泳部の練習が無い日で、かつ時間があれば家庭科同好会にも顔を出すようにしている。
　家庭科室に着くと他の部員たちと挨拶をかわす。ちょうど今日は月に一度の調理実習の日。ただエプロンなどは持ってこなかったので、急遽家庭科室に備え付けのエプロンを身に着ける。

（どんなものがいいかな……）

　桜は思案する。
　彼女はアクセサリーを作るのが趣味なので、折角ならキラキラとした見た目のものを作りたい。そこに『寒天で作る夏のスイーツ』というテーマを踏まえて何を作ろうかと頭のなかであれこれ考える。脳内会議の結果、『夏の青空の錦玉かん』という和菓子を作ることにした。
　錦玉かんとは寒天を煮溶かしたものに砂糖や水あめを加えて煮詰め、型に流し入れて固めたもの。桜は青い錦玉かんのなかに道明寺粉と白あんを混ぜたものを浮かべて、まるで夏の青空に入道雲が浮かんでいるような錦玉の姿を思い浮かべている。
　道具と材料はここに揃っているので、早速取り掛かる。他の面々と夏休みにどう過ごしていたか等の話題で盛り上がりながら、計量や型への流し込みをきっちり行う。

　様々な工程を経て『夏の青空の錦玉かん』は完成した。他の人も水ようかんなど、夏を感じさせるスイーツを作っていた。全員のスイーツが出揃うと、それぞれ見たままの感想を述べる。そしていよいよ試食タイムへ。

（うん……美味しいけど、もうちょっとやれることあったかも）

　桜は自分の作った『夏の青空の錦玉かん』を食べながら、そんなことを思った。味に問題はないし、食感も悪くない。十分おいしいスイーツに仕上がっている。ただ、まだまだ美味しくできるかもしれないと彼女は感じた。
　お互いに作ったものを試食しあい、片づけを済ませると桜は家庭科室を後にする。偶然立ち寄ったここでの時間は、夏休みの思い出を１つ増やした。

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