【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる｜リアクション

【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる

●【射的屋・白の魔弾】２

　星幽塔に住むほしびとも祭は大好き。
　寝子島ではほしびとだとバレるわけにはいかないので、よくよく用心して――というか、寝子島に来ると勝手にこちらの世界に合わない服や姿は変わってしまうのだが――楽しんでいるのは、barアストラルの看板娘であるアリス・ミーティアと、旅する駆け出し剣士な少年ルーク・ポーラスターであった。

「色んな夜店が出てるから目移りしちゃうね」
「本当だな。魔法はないっていうけど、きらっきらでぴかっぴかだ」
「何処も楽しそうだから全部行きたいけど……ルーク、どこがいい？」
　そうだなあ、と決めきれぬうちに、アリスはルークの手を取った。
「射的があるよ。ねえルーク、対決しよ！」
　完全に主導権を握っているのはアリスである。女子は強い！

「白の魔弾？」
　ウォルター先生にルールを聞いて投げ方も教えてもらう。
　アリスは星幽塔で冒険する際は愛用の銃で戦うことが多い。
　だからこそ、ここは勝ちたい、と思っているが、よくよく聞くとルールはダーツに近いようだ。
「ルークはダーツしたことある？」
「ゴブリンに石を投げたことなら」
「ああー、ちょっと近い、かも？　私はないけど面白そうだなって思ってたから楽しみ♪」
　そう言ってチョークを受け取ると、アリスはルークを振り返った。
「多くの的に当てた方が勝ちね。同じ時はチョークを当てた場所が心臓に近い方が勝ち。負けた方がチョークの的になるのはどう？」
「いいぜ」
「負けないよ！　ルークに当てたいし、ルークのチョークは避ける自信があるよ」
「言ったな！」
　チョークと的の数は一緒だ。
　反射神経と正確なコントロールが勝負の決め手となるだろう。
　最初はアリス。
　深呼吸して心を落ち着かせて。
　打ち抜く！　打ち抜く！　打ち抜く！
　人型パネル３体に連射で当てると、間を置かず、七瀬、修とチョークを当てる！
「ふっ……こんなものね」
　人差し指を立てて拳銃風にすると、ふっと煙を吹き消すような仕草で微笑む。
「さすがだな……！　勇者の心得その２２、遊ぶときこそ本気を出すべし！」
　ルークも次々にチョークを投げる。
　が。
「……嘘だろ！　ひとつも当たらない……だと！？」
　ルーク、完敗！
「んっふっふ、ルークが的だねっ！」

　こうして、ルークは人間の的としてしばしの間、アリスに弄ばれることとなった。
「堂々と寝子高に入れるのって嬉しいな。また寝子高でイベントしてほしいー。ルークはどうだった？」
　チョークの粉で真っ白になったルークは、アリスから景品のウミャカ棒を分けてもらってカラカラ笑う。
「楽しかったぜ！」
「よかった！　また遊ぼうね！」