朝陽を浴びながら｜リアクション

朝陽を浴びながら

○心ぽかぽか

　道で七夜あおいと会ったとき、シャワーを浴びておいてよかったと八神修は思いました。
　朝とはいえ暑いですが、汗臭さとは無縁のはずです。
「おはよう、修くん。学校の帰りなの？」
　あおいは元気に声をかけてきました。
「おはよう、あおい。射撃部の朝練帰りなんだ」　
「疲れたでしょう？」
「大丈夫、他の運動部よりは軽いし短いんだ」
「でもこの前は……」
「この前？　あれ……はたまたまだよたまたま」
　なにやら思い出して、修の額を冷や汗が伝いました。
「練習メニューも個人別に調整したしさ」
　大分鍛えたつもりだが、部で一番体力が低いのは修だったりします。
「無理しない程度に頑張ってね」
　あおいの笑顔を見ていると、心がぽかぽかしてきます。
「有難う、頑張るよ。ところで、あおいは買物に行く所かな？　それとも何か用事が？」
　せっかく会ったのだし、できれば同行したい、と願う修です。
（風スポットでオヤツを食べるのも、遊びに行くのもいい）
「うん、ちょっと図書館まで」
　あおいの答えに、修は満足げに微笑みました。
「それはよかった。一緒に涼まないか」
　図書館なら望むところです。
「宿題の仕上げをしようと思ってたんだけど、修君は家に戻らなくていいの？」
「ああ、連絡を入れておけば問題ないよ」
　
　ワイワイと計画を相談しながら、二人はのんびり歩きます。
　思いがけない幸運に、修の心はふわふわしています。
（あおいには内緒だが、あおいもウキウキしてたら更に幸せだな）
　修の心はあおいにはきっとバレているのでしょうが。
「暑いな。自販機で飲み物を買おうか」
「うん」
　ガコン。
　自動販売機から取り出した缶はよく冷えていました。
　頬に当て、修はその冷たさを楽しみます。
　缶を開け、口に流し込むと、体にどんどん染み込む感じでした。
「冷たくて美味しい！」
「ああ。この、時間のゆとりは夏休みならではだね」　
　今日という日は始まったばかり。
　冷房の効いた図書館で、修とあおいはテーブルを確保しました。
（勉強が終わったらあおいが興味をもった場所に行こう。遊びなら映画かな）
　あおいが本を探しに行く間、そんなことを考えながら待つ修でした。

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