朝陽を浴びながら｜リアクション

朝陽を浴びながら

○先生と散歩

　夏休み中ですが、御巫時子はいつものように目が覚めてしまいました。
　鳥さんのさえずりが聞こえると、寝ているのがもったいなくなってしまいます。
「おはようございます」
　鳥たちに挨拶をして餌や水をあげた後は、自分の食事です。
「暑さの和らいでる朝にお散歩しましょう」
　お眠のヨタカさんと元気いっぱいの雷鶏さんに「いってきます」と告げて、着物に日傘をさして出かけます。

（お昼に比べると過ごしやすいですね）
　そう思いながら歩いていると、見慣れた姿を見つけました。
　五十嵐尚輝先生に、会釈して声をかけます。
「おはようございます……。どちらかお出かけですか……？」
「おはようございます。買出しを済ませたところです」
　尚輝先生の手にはコンビニの袋がありました。
　日傘を先生にもさしてあげながら、時子は言います。
「そうでしたか。私はお散歩で海まで行くつもりです。一緒に行きませんか？」
「悪くなるようなものは買ってませんから、いいですよ」
　尚輝先生は遠慮することなく日傘に入って、時子と共に歩き出しました。
「朝はまだ人も少ないですからのんびりゆっくり過ごせそうです」
　時子は微笑んで言いました。
「夏休み中ですから尚輝先生はもっと遅いと思ってたので意外ですね」
「ああ、夏は明るくなるのが早いですから、寝ていられないんです」　
　それを聞いて時子はちょっと心配になりました。
「実験してて寝るのが遅くなったりしてませんか？　朝食はとってますか？」
「まあ……大丈夫ですよ。朝食はゼリー飲料とかまたたびメイトでちゃんと栄養を摂っています」
（本当に大丈夫なんでしょうか……朝食は食べてるなら大丈夫ですよね）
　あまりしつこくしてもと思い、時子は質問を変えました。
「そういえば去年の夏休みは実験結果を論文にしてたり授業関連の資料製作されてたと記憶してますが、今年も変わらずでしょうか？」
「よく覚えていますね。今年は……いろいろあってあまり論文が進んでいませんが。気分転換に出かけてみたいなと思っていました」
　尚輝先生の答えに、時子が少し考えていると。
「御巫さんはどうですか。宿題は済んでいますか」
　尚輝先生に質問を返されました。
「私は夏休みの宿題はもう終わってます」
　そう答え、時子は微笑みます。
「早く学校に行きたいですね」
（尚輝先生にあまり会えなくて寂しいので、学校が始まったらほぼ毎日会えますから楽しみです）
　心の中で時子そうつぶやきました。
「……学校は涼しいですしね」
「少し暑くなってきたのでお散歩再開しましょう」
　時子は、名残惜しく思いながらも立ち上がりました。
（尚輝先生ともう少し一緒にいたい気持ちもありますが……）
　照りつける日差しに、傘をさしていても暑くなってきました。
「熱中症には気を付けて下さいね……」　
　そうつぶやく時子に、尚輝先生はコンビニ袋からペットボトルを出して見せました。

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