【星幽塔】第六階層　天空のジュエル・ポリス｜リアクション

【星幽塔】第六階層　天空のジュエル・ポリス

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　一隻の飛空艇が、奇岩と雲の浮かぶ海を渡っていく。
　目指すは雲海の辺境、宝石の都ジュエルポリス。
　けれどその道程は、決して容易なものではない――。

　飛行して哨戒にあたっていたアリス・ミーティアが、急いだ様子で甲板へ戻ってきた。
「フロストワイバーンの群れが居たよ！」
　報告を受けて、船員や学者たちの間に「いよいよか」と緊張が走る。
　そんな彼らを、　ティオレ・ユリウェイスが軽くなだめる。
「こういう時のための私らよ。それでアリス、規模はどのくらいだった？」
「結構おっきな群れだったよ」
　だとしたら、この先のことも考えて迂回して避けるべきだろう。
　方針がまとまりかけたところで、アリスとは別方向を警戒していた恵御納夏朝と白真白が待ったをかける。
「三時の方向、吹雪を観測をしたよ」
「こっちも猛吹雪が見えるよー」
　進路をワイバーンと吹雪で、三方から塞がれた格好となったようだ。
　しばし船員たちと相談した結果、より規模の小さい吹雪と群れの間を掠めるルートを抜けていくこととなった。

　アリスとサキリ・デイジーカッターの二人が『魔風の光』を発動し、飛空艇の周囲を風の防御膜が包み込む。
　それでも吹雪に近づくにつれ、刺すように冷えていく。飛空艇の周囲が、白く染まっていく。
　防御膜も二人がかりでは万全とは言えないが、それでも無防備に船体を晒すよりは遥かにマシだった。
　やがてひときわ吹雪が強まったその時、右方から金切り声に似た咆哮が響き渡った。
　白銀の飛竜の群れが、猛スピードで接近しつつ在る。
　飛空艇備え付けのカノン砲をかわし、ゆうゆうと迫る飛竜達。
　しかし飛空艇の目前まで迫ったその翼を、矢が貫いた。
「宝石の都に行くんだから、邪魔しないでよね！」
　翼と胴の継ぎ目を、あるいは飛膜を狙って、真白は次から次へと矢を放つ。
　鏃に飛膜を貫き裂かれたワイバーンが、体勢を崩してそのまま墜落。
　あるいはブレスを吹きかけて矢を撃ち落とし、あるいはホバリングから身をかわし、矢を逃れたワイバーンたちが真白を獰猛に睨めつけた。
　なおも射掛けながら、甲板を駆けてワイバーンから距離を取る真白。
　追いかける飛竜の口元から、吹雪を間近にしてもなお凍えるような冷気が漂った。
　マストとマストのちょうど間、遮るものもない場所へと走っていく真白めがけ、極低温のブレスが放たれる。
　そこへアリスが、魔風の力で障壁を展開。散らされたブレスが、霜となって真白の周囲に降り注ぐ。
　そのまま流れるように真白が矢を射掛け、アリスが銃弾を撃ち込む。
　甲高い断末魔をあげて、ワイバーンは落ちていった。
　たまらず散開し距離を取る生き残りを、今度は『斬空赤刃』で船外へ転移したサキリの蛇腹剣が襲う。
　数体が切り裂かれながらも、剣閃を逃れた別の数体がブレスを叩きつける。
　その瞬間、サキリは魔風の力をジェットのように噴射した。
　目の前を冷たい息吹が過ぎていく
　続けて上方へ転移、赤光を纏う一閃がワイバーンたちを斬り裂いた。
　再び風を噴射してブレスを回避し、追ってきた瞬間に再度転移。
　まんまとおびき寄せられたワイバーンたちを、夏朝が横薙ぎに放った肉球戦輪が叩き落とす。
　それでも上空へ身をかわし逃れた飛竜を見つけたならば、金色のワイヤーを猫パペットで掴む。
　くん、と手繰られたワイヤーに導かれ、戦輪が鋭角的な動きで急上昇。
　逆袈裟に飛膜を切り裂かれ、哀れワイバーンはきりもみ回転しながら雲海の向こうへ消えていった。

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