【星幽塔】第十一階層　氷結洞窟の巨人族｜リアクション

【星幽塔】第十一階層　氷結洞窟の巨人族

　刀は鳥かごの前を陣取るヨートゥンが放つ弓矢を自身の日本刀で打ち落としながら進んでいた。
「はっ！」
　タイミングを合わせて矢を真っ二つにぶったぎるのは中々重労働だ。
　海は彼について走りながら、ペンを取り出した。刀が気を引いているうちにヨートゥンの視界外を通って放物線を描き、近くにあった壺を加速させる。壺は反対側、しかもヨートゥンのそばの地面に落下すると、割れた時の衝撃音が。
　びくりと肩を揺らしたヨートゥンの隙をついて刀が切りかかり、さらにそれを踏み台にして鳥かごを吊るしていたロープを切った。
　海は落下した鳥かごへ駆け寄る。中で意識を失っていた白金がようやく目を開ける。
「あなたは……」
『助けに来た。逃げる準備をしていて』
　見ると、刀は復活した弓使いと再び対峙している。まだ気づいていない。
「！」
　海は先ほどろっこんで移動させた壺の残骸の中に銀色に光るものを見つける。
(もしかして)
　そっと移動して拾ってみると、予想通り鍵だった。
　南京錠をはずし、白金をかごから引っ張り出す。
『怪我は？』
「大丈夫です。あ、ありがとう」
　海は頷いて、
『見つからないうちに出口へ。出口へたどり着けたら、大声で皆に「逃げるよ」って叫んで』
　三人は必死に引き付けているが、三体すべてを倒すのは不可能だろう。
「わ、わかりました」
　海は白金と共に壁づたいに走る。
　さらに再びペンを取り出し、魔土の光を発動させた。星の力で足場を作り、白金の手を引いた。
「え？　何を」
　戸惑う白金だが、海は気にせず宙に出現した足場を走り抜ける。
（大丈夫だから）
　彼女の目を見ると、気持ちが伝わったのか、はっとした様子で頷いてくれた。
「あの、たった四人で、助けに来てくれたのですか？」
　海は微かに笑みを浮かべて頷いた。
　やがて、部屋の出口へと到着する。
「い、いきます」
　白金は息を吸い込むと、
「皆さんっ、逃げて下さい！！」
　その声に豪、ティオレ、刀が反応し、ヨートゥン達の攻撃をかわしながら出口へと走ってくる。
　海は脱出するため、星の力、真士の光を宿した大筆で高さ二メートルほどのトンネルを作った。
『脱出する！』
　全員が集まったところで、一直線に外へ。
　すると、豪が、
「祭りはいいが、人間を生贄にするのはやめろ！　今度やったらもっと大勢で来て、氷の洞窟を溶かす！」
　追いかけてこようとするヨートゥン達に言い放った。

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