【星幽塔】第十一階層　氷結洞窟の巨人族｜リアクション

【星幽塔】第十一階層　氷結洞窟の巨人族

　一足先に洞窟の最深部に到着したのは海と豪だった。通路の先は開けた空間、というか部屋になっていて、その中央に下がっている大きな鳥かごの中にその少女がいた。特徴を見ても彼女が白金で間違いないだろう。もちろん、部屋にいるのは彼女だけではない。それぞれ、斧や槍、弓矢を手にしたヨートゥンが三体。十数体いるとの情報もあったが、いまは見回りにでも出ているのだろうか。
「ちっ、二人で三体はきついか」
　豪が部屋の中を覗き、舌打ちをする。すると、海に肩を叩かれた。
「ん？」
　スケッチブックを見せてくる。
『鳥かごの鍵』
　豪は目を凝らした。確かに鳥かごの扉に古い南京錠がつけられているようだ。
「んん？　どこかに鍵があるってことか」
　海は頷いた。ヨートゥンの数からして、すべて打ち倒すのは無理だ。彼女を救出して逃げたほうが良いだろう。
「鍵はやっぱりヨートゥンが持っているんじゃない？」
　後ろからの声に、海と豪は振り返った。
「いきなり悪いな。部屋の中はどんな感じだ？」
そう問うてきたのは刀だった。最初に声をかけてきたのはティオレだったようだ。
　豪と海は二人が自分たちと同じ境遇でここにいるのだろうとすぐに理解する。
「三体いるんだよ。だから、見つからないように助け出した方が良さそうなんだ」
「俺は、どうにか近づいて鳥かごを地面に落とす。引き付け役もやろうか？」
「じゃあ、二人でやるか！　俺も行くぞ」
　刀と豪は頷き合う。
　海はスケッチブックを皆に見せた。
『じゃあ、私達は白金さんの救出？』
「待って、ヨートゥンは三体いるから、私も引き付け役に回るわ。援護するから、お願いできる？」
　海は少し考えて、
『わかった』
　うなずいた。
「決まりだな。まずは俺が突撃する！」
　豪は拳を握りしめると、駆け出した。
「うおおおっ」
　すぐに気づいたヨートゥンが斧を振り上げる。
「ファイトー！」
　ろっこんを発動させると、ヨートゥンが持っている斧の重さがゼロになった。そのせいでバランスを崩した隙に、
「これはもらうぞ！」
　斧を奪った。
　手をついたヨートゥンは豪を睨み付け、口から氷の息を噴き出した。
「！」
　豪は斧でそれを防ぎながら、走りだし、陽動する。

　ティオレは鳥かごの前に腰をおろす、槍使いのヨートゥンへ向けて駆け出した。気づいたそれが、ゆっくりと立ち上がる。
　間髪入れずに繰り出された槍による突き攻撃を横にかわす。
　すぐに間合いへ踏み込み、魔火の光のダガーナイフで腕を一閃。腕から肩を切り裂かれヨートゥンは呻き声を上げた。傷口は魔火の光でやけどのようになっており、苦痛を与えているようだ。
「ぐぅう……」
　もう片方の手で槍を持ち、睨み付けてくる。さらに攻撃をお見舞いしようと構えるが、
「避けろ！」
　刀の鋭い声が聞こえてきた。
　彼の声に後ろへ飛ぶとそこに矢が突き刺さった。
　刀の相手は弓使いらしい。

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