【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

☆あじさいの花火

　夏朝は夜空を見上げていた。
（色とりどりの花火、楽しみ……って、あれ？）
　その花火は、何かが違っていた。
　何が違うのか、言葉にはできなかったけれど。
（夜空に、大きなあじさい……が……？）
　何故かぽろぽろと、涙が溢れた。
（止まらない……どうして？）
　自分でもわからないまま夏朝は考える。
（色々あったけど、寝子島での２回目の夏休みを迎えられて嬉しいのかな）
　悪人と戦ったり異世界へ行ったり、猫に囲まれた学校生活を楽しんだり。
　平和であれば、寝子島での生活には大体満足している――いや、一つの問題を除けば。
（それとも……大切な別人格と一緒に並んで花火を見れなくて、悲しいのかな……）
　夏朝の中には、もう一人の自分――夏夜という別人格がいる。
　交換日記でお互いの考えていることは知っていて、夏夜は夏朝にとって大切な存在だ。
　けれど自分が目覚めている時には夏夜は外に出れない。
　夏朝は、二人が心身ともに分離・共存することを切望している。
　けれどどうすればそれができるかまではわからない。

　涙溢れながらも、空を見上げた。
（あじさい以外の花火は上がってるかな……）
　何発も何発も、大きな音と共に美しい花火が夜空に花を咲かせる。
「来年は……一緒に、並んで、見れたらいいな……」
　美しい花火の光に、心は洗われていくようで。
「あ、猫さんの形だ」　
　いつしか夏朝の頬は乾いていた。

「……泣き止んだら、お腹すいちゃった」
（屋台、まだやってるかな……？）
　すっきりした気分で、夏朝は屋台へ向け歩き出した。