【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

　宮祀智瑜は、赤地に大きな花柄の浴衣を着て寝子ヶ浜海岸にやってきた。
「なんだか今日は義弘先生に会える予感がします！」
　乙女の勘がそう告げていたのだ。
　人ごみを進んでいると、桐島義弘先生の姿を発見した！
（先生の近くに人はいないみたい？　誘うチャンスです）
　一人で来たらしいことに安堵しながら、声をかける。
「こんばんは、義弘先生」
「……宮祀か。一人なのか？」
　義弘先生の視線が智瑜の浴衣に止まる。
「義弘先生、一緒に花火見ませんか？」
　可愛くお願いする。
（まさか花火大会の日も見回り？　花火大会ぐらい楽しまなくちゃ。私の浴衣姿に気付いてくれるかな？　少しは大人っぽく見えてたら良いな）
　義弘先生の返事を待つ間、智瑜の頭をいろんなことが駆け巡った。
　先生は少し考えてから、仕方ないな、という様子で言う。
「……夜に、こんな人込みで一人は危ないからな」　
「いいんですね！　ありがとうございます！」
　喜んだ智瑜は先生の腕を取る。
「お、おい……」
「人込みではぐれたら困りますから。先生、屋台に寄って何か買いましょう」
　屋台へ向かった智瑜はお店の人に声をかけた。
「綿あめください」
「はい、ちょっと待っててね」
「あの、花火が綺麗に見える場所ってどこですか？」
　屋台のお姉さんに顔を寄せて、こっそり智瑜は尋ねる。
「ああ、それなら……」
　お姉さんは義弘先生をちらりと見て、訳知り顔で教えてくれた。
「ありがとうございました！　先生、チョコバナナも買いましょう」
　チョコバナナを買った後、智瑜は先生を案内する。
「先生、こっちです。ここからの花火が綺麗に見えるそうですよ」
「おい宮祀、転ばないように気をつけろ」
　お茶を買った義弘先生が、両手が塞がっている智瑜を気遣ってくれた。