【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

○出会えた人々

「花火大会と聞くと心が躍りますね」
　御巫時子は紺地に向日葵柄の浴衣を着て、手提げ籠を手にドキドキしながら少し早めに会場に向かった。
（暗くなってからだと人が多そうですし）
　まだ人もまばらなうちに海岸の端の方に場所を見つけて、ゆっくり見ようとレジャーシートを敷いておく。
　時子には秘めた思いがあった。
（尚輝先生にお会いしたら一緒に花火を見ませんかとお誘いしたいですね。好きな人と一緒に見たいですから）
　
「御巫さん？」
「尚輝先生！　こんばんは」
　はたして、五十嵐尚輝先生がいつもの白衣姿で向こうから歩いてきた。
「先生も花火大会にいらしてたんですね」
「花火は外で見られる科学の実験ですからね」　
　尚輝先生らしい答えだと時子は思った。
「先生、場所を取ってあるんです。一緒に見ませんか？」
「それなら、お邪魔しようかな」
「はい！　今屋台へいくところだったんです」　　
「何か飲み物でも買いましょうか」
「はい、屋台に行って花火までに何か食べるものも買いたいですね」
　二人は屋台へ向かう。
「私はお好み焼きにしましょう。先生は何にしますか？」
「僕はアメリカンドッグにします。飲み物はサイダーで」　
「私も、お茶も買いたいです」

　買い物を済ませると、二人は時子が取った場所に戻り、シートに座って温かいうちに食べ始めた。
「楽しみですね」
　場所取りする事はあまりない時子は、良い場所が見つかったことに一安心していた。
「あの辺りから打ちあがるんでしょうか？」
　見当をつけて指さす時子。
「打ち上げは人がいるところから十分に距離を取る必要があるし、たくさんの人から見やすい場所でないといけません。あの辺りなら妥当でしょうね」
　尚輝先生が頷いた。
　いつのまにかどんどん辺りが暗くなっていて、灯りが点き始めて。
「人が多くなってきましたね。もうすぐですね」
　ドキドキしながら時子は尚輝先生を見つめるのだった。