【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

☆あさがおの花火～先輩と

　羽生碧南は、両親と姉と一緒に花火大会へやってきた。
　こうして家族そろって花火大会を見るのは２年ぶりになる。
　碧南の家は高校入学の直前に火事で全焼してしまい、家族は鎌倉の父方の実家に身を寄せている。
　色々と面倒なこともあるみたいだけど、そのことについては聞かないことにする。
（せっかく久しぶりの花火なんだもの）
　両親や姉の顔を曇らせたくない。
「碧南、屋台があるぞ。何食べる？」
「……あ、うん！」
　屋台で色々と食べ物を食べているうちに、心臓がドクン、と来た。
　なんと、想い人の鷹取洋二先輩の姿が！
　ちょうど目の前の屋台であんず飴を買って食べているところらしい。
（どうしよう……こちらから声をかけようか……）
　と逡巡していたら、視線が合った。
「やあ、羽生くん」
「ひゃあ……！　こ、こんばんは」
　鷹取先輩の方から声をかけられて、変な声を上げてしまった。
　大学生の姉はそんな碧南の様子を見て意味ありげな笑いを見せる。
　そして両親に言うのだった。
「碧南の邪魔はしないで、さっさと会場へ行こう」
「そうね、それじゃあとでね」
　母と姉は、何か言いたげな父を引っ張ってさっと歩いていってしまった。

　こうして二人きりになった。
「……先輩も花火ですか？」
「うん。それじゃ行こうか」
　歩きだした洋二に続いたが、黙っていると落ち着かなくて、碧南は言葉を探す。
「本当に駄菓子好きなんですねー」
　洋二の手にしているあんず飴を見て言ったり。
「ああ。駄菓子は最高だよ」
「……そういえば、三年生の夏休みって進路のこととかで忙しいんじゃないですか？」
「僕はまだインスピレーションが浮かばなくてね。焦らずにゆっくり考えてみるつもりだよ」
　とかいろいろ聞いたりしながら、
（何つまらないこと聴いてるのよ、もっと気の利いた話ができないの）
　とか思ったりする碧南である。
　いくら乙女ゲーでは百戦錬磨の恋のベテランでも、リアルでは恋愛初心者未満だ。

　そうこうするうちに、会場へたどり着いた。
　ドーン！
　花火が打ち上がるのを先輩の隣で眺めていた。
（なんだか不思議な感じ）
　と思ったとき、碧南は、あさがおの幻を見た。
　紫、かと思うと赤やピンクとさまざまに色を変えて……
　唐突に口をついて、

「先輩、一緒に写真撮りませんか？」
　という言葉が出た。
（え、あたし何でいきなり……？）
　そう思いつつも、一緒に撮れたら素敵だな……と、ドキドキしながら、その返事を待つ。
「いいね」
　先輩はすぐに頷いてくれて携帯を取り出した。
「ちょうどあそこに先生がいるから、頼んでみよう。ジャン先生！」
「ワーオ！　呼んだかい？」
　突然現れたジャン先生に驚く碧南。
（え、なんでちょうどいるの？）
　乙女ゲーじゃあるまいしこういうご都合主義な展開はどうなの？　と思わなくもないが、撮ってもらえるなら文句を言う筋合いはない。
「はいそこに並ンデ！　Say Cheese！」
「「チーズ！」」
　あれよあれよという間に写真撮影は済んで、ジャン先生は去ってゆき。
「いい写真が撮れてよかったよ。羽生くんにも送ろう」　
　鷹取先輩が碧南に写メを送ってくれた。
　先輩も碧南も、思った以上に良く撮れていて、ドキドキした。
　