【星幽塔】第二階層　洞窟温泉に潜む魔物｜リアクション

【星幽塔】第二階層　洞窟温泉に潜む魔物

　洞窟の天井近くまで飛んだアリスは、手に魔火の炎を灯し、
「えいっ！」
　それらを『はいびと』達に飛ばす。不意を突かれた者には当たるものの、アリスの攻撃を読んで避ける者も出てきた。
「あっ」
　分が悪いと判断したのか、『はいびと』の何人かが逃げ出そうとしていた。
「逃がさないよ！」
　それらを追いかけて、アリスは洞窟を奥へと進む。
「あれ？」
　前方で何かがキラリと光った。この先は通路が広らけた空間になっているようだ。地面に着地した。
　何やら水の跳ねる音と風の音がする。
　開けた空間の入り口を覗き込むと、戦輪がひゅんひゅんと音を立てて飛び回っていた。集まっていた『はいびと』達が次々に倒れて行く。
　どうやら、同じように依頼を受けた人がいるようだ。

　夏朝は戦輪を操り、いつの間にか増殖した『はいびと』を一層して行く。
　かなり水音もしているので、引き寄せられてくるのだろう。
「どんどん来ていいよ。僕がせめて苦しまないように弔ってあげるから」
　と、その時だった。
「危ないっ」
　空から声が振ってきた。それとは別に背後に気配を感じ、振り返ると、いつの間にか回り込まれていたらしい。『はいびと』が迫っていたのだ。後ろへ飛びながら、戦輪を引き寄せるが間に合わない。とっさに星の力で水弾を撃ち込むが、当たったのは一発だけ。
「ぎゃっ」
　短い悲鳴を上げて、地面へ倒れ込む。
　しかし、別の『はいびと』が夏朝襲いかかってきた。さすがに避けきれない。そう思った時、天井からいくつもの炎が降り注いだ。
　それらはこの空間内にいる『はいびと』のほとんどに直撃し、数匹が逃げて行った。
　それと同時に地面へ着地したアリスと、夏朝は向かい合う。
「助けてくれてありがとう」
「いいよ、いいよ！　それより、そこのって温泉？」
　夏朝は少し考えて、
「多分、びりびりの湯だよ。入った時にそんな感じがしたから」
「じゃあ、さっそく」
　アリスはいそいそと服を脱ぎ出した。
「……入るの……？」
　夏朝はやや困惑気味に問う。中々激しいバトルを繰り広げたばかりだというのに。
「温泉だもん入らなきゃ損だよ。半身浴にしよっと」
　そんな会話をしていると、開けた空間の入り口から誰かが入ってきたようだ。

　自身のろっこんに有利な場所を探して進んでいたのにも関わらず、一番厄介だと思っていた広い空間に出てしまった。
　先客がいるようだが、『はいびと』ではなさそうだ。
　会釈をしながら、歩み寄り、スケッチブックを開く。
『こんにちは』
　そう書かれたページを二人……アリスと夏朝に見せる。
「もしかして、『はいびと』退治の依頼を受けたひと？」
　夏朝に問われ、スケッチブックにペンを走らせる。
『あなたたちも？』
　半身浴を楽しんでいるアリスと夏朝は互いに視線をかわした。
「今、戦ってたところなの！」
「逃げたのもいるけど、結構倒したと思うよ」
　海は何度か首肯く。どうやら二人は広い空間で戦闘する方が向いているらしい。
　自分のろっこんについて話し、有利に働くような場所があったかどうか聞いてみる。
「挟み撃ちにされない場所を探してるの？　そっちの出口の先にあったような？」
　どうやら洞窟内はさまざまな形状の道があるようだ。
『ありがとう、行ってみる』
　同じ目的があるとしても、海にとってこの空間は不利だ。早く離れることにした。
「あ、そうだ。ここに『はいびと』が攻めてきたらそっちに誘導するから、一網打尽にできる？」
　夏朝に問われ、海は頷いた。
「決まりだね」
　依頼を推考した暁にはゆっくり入ろう、そう決心するのだった。

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