【星幽塔】第二階層　洞窟温泉に潜む魔物｜リアクション

【星幽塔】第二階層　洞窟温泉に潜む魔物

　アリス・ミーティアは第二階層の洞窟温泉の入り口の前にいた。
　気になる依頼があったのだ。給仕として働くＢａｒアストラルのマスターには休みをもらってある。
「よーし、張り切って行こうっ」
　洞窟温泉と聞くだけでワクワクする。アリスは中へと足を踏み入れた。
　すでにアリスは水着姿。洞窟の地面に満たされているお湯も丁度いい温度で、ここで半身浴をしても良いくらいだ。
「ん」
　どこからか水を跳ね上げて駆けてくる足音がする。
　丁度三叉路に差し掛かったところであり、足音は左の道から聞こえてくるようだ。
　アリスは、隠れることもなく、仁王立ちで構えた。
　やがて、大きくなってきた足音と、今回退治依頼があった『はいびと』の姿を確認する。
　大人の男性程の体格で、全身が灰色、目や鼻はなく、つるんとしている。
「うー、うー」
　唸るような声をあげながら、真正面から迫ってくる『はいびと』が自分の間合いに入る直前、地面を蹴って、上へ跳んだ。

　恵御納夏朝は洞窟へ飛び込み、走っていた。運悪く入り口付近で複数の『はいびと』に見つかってしまい、追われているのだ。
　右へ左へ、洞窟内を奥へと進んでいると、広い空間に出た。ここだけは地面が少しだけ高くなっていて、くるぶし程度の深さになっていた。その中心に石で縁取られたプールのようなものがある。
　それがなんなのか、理解した。
「ここなら」
　石の縁を飛び越えて、円の中へとダイブ。予想通り、深くなっている。どうやら温泉のようだ。中へ潜ると、元来た道から『はいびと』が現れた。辺りを見回して夏朝を探しているようだ。
　夏朝はその様子を見ながら、目を細めた。彼らが何者なのかはわからないし、恨みはないが、倒さないわけにはいかない。せめて、その魂が癒されることを願って。
「チャンスッ」
　夏朝は小さく呟いて、温泉から勢いよく飛び出した。
　温泉を囲っていた石の縁に着地すると、肉球型戦輪を思いっきり斜め振り回す。
　巻き込まれた『はいびと』達が次々と倒されて行った。

　小山内海は洞窟温泉の入り口に立っていた。
（洞窟温泉……いい響きだよね。使えるようになったら私ものんびりしたいなぁ）
　そのためにも、今は依頼をこなさなくてはいけない。
　洞窟内に入ると、足元は温泉で満たされていた。丁度良い温度だ。極力水音はたてないように進むことにした。
（ん、ここ狭い）
　元々広くはないが、いっそう狭くなっている箇所があるようだ。通路だと挟み撃ちが怖い。想像してしまい、海は息を飲んだ。嫌な想像を振り払って、
（もうちょっと奥まで）
　どうやら洞窟内は広くなったり狭くなったりしているようだ。
（広間は……囲まれると怖いし）
　海が探すべきは自身のろっこんを活かせる場所だ。さらに奥まで行ってみることにした。

　シグマ・F・FGは噂の洞窟温泉の前に立った。
　最近になって見つかった場所なのだが、先日からとある依頼が出回っている。
「使いたいから、ここをなんとかしろって事ね。まぁ、軽いだろうな」
　今回の戦いの場所、つまり狭い洞窟内だと聞いて、竜王滅星刃は置いてきている。今回は普通の剣だ。
「それにしても、今度は『はいびと』、ね」
　水が引いて出てきた古い都市や第9階層で回収された機械人形など、最近この塔は妙なことになっているような気がする。
「さっさと片付けて、風呂場で過ごしたいもんだぜ！」
　シグマは洞窟内へと足を踏み入れた。
　足元に満たされた温泉は少し歩調を早めると音がしてしまう。ゆっくりと歩く分には問題無さそうだ。
「どろどろの湯ってのがあったな」
　もちろん、出てきたら焼き付くすだけだが、温泉を利用するのも手だろう。

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