家電のスイッチを切らせるな！｜リアクション

家電のスイッチを切らせるな！

●相撲対決

　猫鳴館。
　北里雅樹は自室でノートパソコンで作業をしていた。目的はニャフオクで猫鳴館の怪しげな品物を売りに出すこと。どれがいくらくらいで売れるかな、などと考えていたら急にノートパソコンの電源が切れた。

「どうなってんだ？」

　首を傾げているとなにやら気配を感じた――見ると、なにやら影のようなものがちょろちょろと動いて、あらゆる家電の電源を落としている。

（どういうつもりだ？）

　考えている間に影はどこかへ消えてしまった。そいつを捕まえようと部屋を出るが……ここは昼なお暗い猫鳴館である。影なんて、この暗闇に溶け込んでしまってどこにいるのか分からない。どうしたものかと思っていると、自分以外にも電源を落とされたであろう連中の悲鳴やら怒号やらが飛んできた。
　このままでは埒があかないので、とにかく探し回ることに。すると廊下のほうで怪しげな影を見つけた。おでこに炎のマークがついている。影は雅樹に気づくと、逃げるどころか勝負を挑んできた。

「スモウ、ヤル」

　そう言うと、猫鳴館の外へ出る。雅樹はその後を追う。影は平らな場所を見つけて、そこに円を描くと、腰を落として相撲の構えを取る。

（まいったな。俺は力で勝負するの苦手だし……）

　しかし、そんなことも言ってられないので、勝負に臨むことにした。すると、この勝負に気づいた住人たちが面白がって集まりだした。いつの間にか人だかりができあがり、勝手に盛り上がっている。
　両者は向かい合って、突進するタイミングを図る。ぐっと影が足に力を込めて向かってきた。それにあわせるように雅樹も突っ込む。

（……見た目と違って強い）

　子どものような体格からは想像できない力強さに雅樹はやや押され気味だった。しかし負けてなるものかと足に力を込める。お互いに譲らず、即席の土俵で一進一退を繰り返す。周囲は頑張れと声援を送ったり、押せ押せとはやしたてる。
　簡単にできるなら苦労はしない。それでも、雅樹は影をじりじりと土俵の端へと追い込んで、なんとか土俵の外へ足を踏ませた。勝負が決着し、歓声をあげる人だかり。

「オマエ、カチ。オレ、マケ」

　勝負に敗れた影は潔くその場を去った。

「これで平和が戻った……かな？」

　突然降りかかったトラブルはこうして幕を下ろした。

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