【星幽塔】第六階層　ウィッチパーティーへようこそ｜リアクション

【星幽塔】第六階層　ウィッチパーティーへようこそ

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　水上桜は、銀の使い魔のジャグリングにすっかり見入っていた。
　ゴーレムたちの演奏に合わせたジャグリングなのだが、なんと器用なことに演奏中のゴーレムの頭の上でやっているのだ。
　しかも時々ゴーレムの頭を乗り移ったりするものだから、なかなか目が離せない。
　一曲演奏が終わると、ジャグリングもそこで終わった。
「……すごかった」
　ほう、と思わず息がこぼれる。
　芸の余韻にひたるのもそこそこに、見入っていた間つまめなかったお菓子に目を向けた。
　半ば立食パーティーのようになっているのもあって、星幽塔の色々な食べ物に目移りしてしまう。
　そんななか、透き通るような色合いのお菓子に桜は気付いた。
　水をそのまま固めたような、そんな感じだ。
　こういう和菓子があったような気がするけれど、星幽塔に和菓子があるとも思えないし。
「それ、果物みたいだよ」
　サキリ・デイジーカッターの言葉に、「えっ」とちょっと困惑した声が漏れる。
「果物？」
　思わずまじまじと見つめたあと、とにもかくにも一つ食べてみることにした。
　ぷるぷる震えるソレを、貸衣装のドレスにこぼさないように注意しながら口へ運ぶ。
　すると果肉のような食感と、ほどよい酸味と甘味が口の中に広がった。
「ほんとだ、これ果物だ……」
　さすがに星幽塔だけあって、珍しい食べ物もあったものだ。
　他にもあるだろうかとテーブルを見渡していると、今度はまるで宝石みたいなお菓子を見つけた。
　色とりどりにきらめいていて、いつまでも見ていられそう。
　一つ手にとって食べてみると、甘く、そしてしゃりっとした歯ごたえの砂糖菓子だった。
　そうして甘いものを食べていると、少し喉がかわいてくる。
　そこへ給仕ゴーレムが、お茶を持ってきてくれた。お礼を言いつつ、ほどよい温度のそれを一息に飲み干す。
　すると、なぜか頭の中に映像が浮かんだ。
　今よりもちょっと成長した――といっても、十八歳くらいだろうか――自分が、何かアクセサリーのようなものを作っている。
「今のって……もしかして、未来？」
「さっきのお茶が、きっと『星詠みのお茶』だったんですね」
　首をかしげる桜に、フローレンスが教えてくれた。飲むと未来が見える、不思議なお茶なのだそうだ。
（未来のわりには今とあんまり変わってなかったけど……）
　案外、未来なんてそんなものかもしれない。　

　その近くで何やらゴソゴソしている旅鴉月詠に、ティオレ・ユリウェイスが声をかける。
「何やってんの？」
「ん？　ああ、手土産を持ってきたのでね。おっと、助かる」
　ゴーレムが差し出したトレイに、ハーブティーに、ブレンドコーヒーに、それからクッキーを並べる月詠。
　どれも第一階層の喫茶、『迷い猫』の生産品だ。
「じゃあ折角だし、そのクッキーもらえる？」
　が、さっそくクッキーに手を伸ばした。
「実は私たちも、ケーキ持ってきてるんです！」
「ふたりで作ったんだよー！」
　リリエル・エーテライトとメリィ・ランページが持ってきたのは、フルーツ盛りだくさんのケーキだった。果実の香りが、ふわっと鼻をくすぐる。
　すっと移動した銀の使い魔がスペースを確保してくれたので、ひとまずそこへ置くことにした。
「皆さんのおかげで、豪華なお茶会になりましたね」
　華やかさを増したテーブルを眺め、フローレンスはクスっと微笑んだ。

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