【星幽塔】第一階層　はぐれ怪鳥と騒乱の暴風｜リアクション

【星幽塔】第一階層　はぐれ怪鳥と騒乱の暴風

「くっ！」
「やばいやばい、崩れる崩れる……」

　ティオレが飛びのくと、そこにヴォラティルのくちばしが深く突き刺さった。それと同時に、彼女の居た物見櫓にはヴォラティルの身体が当たり、その衝撃で大きく揺れる。更にくちばしを抜こうともがく動きで櫓のあちこちが悲鳴を上げていた。ティオレは若者とともに櫓を飛び下り、魔風の光で衝撃を殺しながら地に降り立つ。
　その瞬間、彼女たちの反対側から声が上がった。彼らの声に釣られるように、ティオレの目は空を見る。

「なんだありゃ？」
「ワイバーンだ！　敵の増援か！？」
「いや、違うな……人が乗ってるぞ！」

　遥か高く、ヴォラティルの後方からワイバーンが飛んでくる。ワイバーンは風を切り旋回し、それに乗ったグレッグがヴォラティルの死角から弓矢を打ち込んでいった。そのうちの数本がヴォラティルの身体を掠めると、ごあああ――という咆哮が噴き出す。

「っし！　こっち来い！」

　グレッグがにやりと口角を上げると、彼の狙い通りヴォラティルの視線が彼とランドルに向けられる。暫しの睨み合いの後、ヴォラティルがグレッグとランドルに向かって突進する。それを読んだグレッグはランドルを操り、その下を飛ぶと腹に矢を放った。その隙にティオレと若者は態勢を整え、次の攻撃に備える。

　ヴォラティルとグレッグの攻防の下、カンカンと乾いた音が響き、数人の男女が町に入ってきた。それに気付くと、若者の瞳に希望が宿る。城下町に援軍を呼びに行った面々だった。

「ネコジマの奴らが来たぞ！」

　その声の後ろで、武装した少女と少年、そして女性の三人が駆け付ける。若者はそれぞれの顔を確認すると、ティオレと仲間の肩を叩いて立ち上がった。

「三人か……来てくれただけでもありがたい！　俺たちも行くぞ！」

　ティオレと若者がヴォラティルとの戦いに向かう後ろで、その三人の中の一人、一際年長者の女性――白石妙子はうつむき加減にぼそぼそと呟く。

「若くなくてごめんなさい……」
「大丈夫、二桁はまだ若い」
「あそこの見張りは来月で300歳になる」
「ひええ……そうなんですか……」

　ほしびとのスケールの大きさに驚かされる妙子だったが、どこからか突風が吹き荒れその強さに思わず目を閉じる。

「な、何……？　すごい風！」

　彼女は思ったままを口に出したが、次の瞬間口に砂が入って咳き込んだ。その風が止み、頭上から耳障りな啼き声がすることに気付いた妙子はそれに釣られるように視線を空へ向ける。太陽の眩しい光の中、極彩色の羽がひらりひらりと舞う。

「なんて大きい鳥……」

　怖い。心の中に浮かび上がる言葉を唾とともに飲み込みながら、妙子は再び巻き起こった風に、それを含んで浮いたスカートに悲鳴を上げた。

「いやっ、スカートが！」
「大丈夫！　気にすんな！」
「き、気にしますぅ～……」

　それにしても――と妙子は自らが纏う武装をまじまじと見つつ、こう思うのだった。

　――このファンタジーっぽい服、露出が多くない？

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