【星幽塔】第一階層　はぐれ怪鳥と騒乱の暴風｜リアクション

【星幽塔】第一階層　はぐれ怪鳥と騒乱の暴風

　ぐぎゃあ、ぐぎゃあ……。そう啼くヴォラティルの羽ばたきが再び竜巻を起こす。竜巻は再び街を飲み込み、人々を、建物を粉々にしていく。

「なんだあのデッケェ怪鳥は……」

　その様を、グレッグ・グロッグは天高く飛ぶワイバーン――ランドルという名を持つ――に乗りながら見ていた。ヴォラティルはグレッグに気が付いていないのか、またぐぎゃあとその鳴き声を響かせる。グレッグはヴォラティルの動きからそれが何をしているのか察すると、

　――あー……ヤバそうだな……。

　と考えた。そうして、ランドルの背を撫でて口を開く。

「よし、ランドル！！　あそこまで飛んでってくれ！」

　ランドルはグレッグの声に応えるように鳴き声を上げ、彼の言葉と指差した方向の通りに風を切って飛んでいく。
　その刹那、ぐぎゃあ、ぐぎゃあ――という鳴き声とともにヴォラティルが再び風を起こした。その強風に髪を靡かせながら、グレッグは武器を構える。

　一方その頃、町はヴォラティルの起こす暴風で荒れていた。若者の放った矢も竜巻の中に巻き上げられ、煉瓦の破片とぶつかり合い、折れていく。若者はその様を見て軽く舌打ちすると、手にした弓を下ろし、機を待った。

「ったく、とんでもない鳥が現れたものよね」
「まったくですよ！」

　風でじゃらじゃらと無数の装飾品が揺れる。若者の後ろに控えていた、ロングソードを構えた踊り子の女性――ティオレ・ユリウェイスが毒づくと、若者は叫ぶように同意の言葉を述べた。ティオレは刃に魔風の光を宿らせながら、若者たちの会話を聞いてこう思う。

　――さっそく人を呼んでくるあたり、町の住民もなかなかしたたかだな。

　とはいえ、増援が来るまで時間がかかる、ということもティオレには容易に想像できた。それまでの間、誰かが時間を稼がねばならないことは明白で、それは自分と、今いる若者たちだろう。そこまで考えて、ティオレはロングソードの柄を強く握り締める。
　その時、風が止んだ。ヴォラティルは空を舞いながら、次の標的を探している。ティオレはその剣を振るい、刃に纏わせた無数のかまいたちをヴォラティルに向けて飛ばした。ちょうどよそ見をしていたのか、全てのかまいたちがヴォラティルの身体に突き刺さる。つんざくような悲鳴を上げたヴォラティルは一度地に落ちると、今度はティオレに狙いを定めて、そのくちばしを光らせた。

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