携帯戦記カプセルギア　練習しよう、カプギアアスレチック！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　練習しよう、カプギアアスレチック！

　ロビーは人混みでごった返していた
　売店はアスレチック限定のノベルティなどのキャンペーンもあり、客は引きも切らなかった。
　アトラクションを終えたギアマスターたちが、ドリンク片手に談笑していた。
　
　由枝はそんなマスターたちの会話に混じり、頬を紅潮させている。
　ポラリスの果敢な操作に感動したというギアマスターたちが質問してきたのだ。
　本来聞き上手の由枝、すっかり彼らと打ち解けた。
　ギアを中心にして、自分の周りが変わっていく。
　自分は変わらないのかもしれないけれど、環境が変化していく。

（あれ、女性用のギアグッズ･･････）
　一通りアトラクションを終えた夏朝が、メンテナンスグッズ目当てにやってきた売店で目にしたのは、様々な女性用のグッズ。
　ギアのコスチューム、アクセサリー、顔料、さらにはグロスやマニキュアまである。
　カプギアが単に子供の玩具ではなく、ペットや友人のようなものになりつつあることを示していた。
　今日はアマネちゃんもいっぱいがんばったので、ご褒美があっていい。
　小箱に入ったメンテナンスグッズ集、それからコスチュームとギア用のアクセサリーなど一式を購入。アトラクションをこなしたので、多少割引が付いていた。
「お疲れ様･･････アマネちゃん、本当に頑張ったね！」
　ケース越しに話しかけると、ギアがケースの中でそっと身じろぎしたような様子だった。

　ロビーの奥では、ギアの改造講座が行われていた。
　長椅子を持ち出して、講師がレクチャーしている。
　人だかりが出来ていて、ちかよることは難しい。
「――ちょっとデカールを張ったり、ペンを使うことで、ぐっとオリジナリティーやリアリティを出すことが出来ます。なにも塗装っていっても、難しくないよ。なれてきたらこうして、歯ブラシと金網で･･････」
　歓声が起こる。
　塗装済みのプラモがもはや当たり前となった時代、塗装や仕上げなどはもはやロストテクノロジーの領域だ。
　しかし、プロモデラーならずとも、ほんの少しの工夫でぐっと効果を上げることができる。
「すいません、僕のギアもお願いします！」
「ご希望はあるかな？」
「かっこよく強くしてほしい！　翼をつければ、『サバイブ感』が出るって言ってた！」
「プラ板をちょっと加工してみよか」

　さすらいのカプギアおねーさん、またの姿をギア塗装講師。
　五郎八は乞われるままに、スタッフの一員以上に、アトラクションを走り回り、アトラクション運営に尽力していた。

「ほいっ、と」
　最後の調整を加えたギアを渡して、五郎八はにっこりと笑った。
「ありがとう、カプギアおねーさん」
「困ったときは、さすらいのカプギアおねーさんに頼りな」
　スタッフの一員でもないのに、なんだかかなりお手伝いしてしまった。
　何人かの内部の人間にさえ、スタッフと間違えられていた気がする。
（私、何をしに来たんだろう･･････）
　こちらも散々レスキューに勤めたグリフィージスをしまいこみながら、ふと目を上げる。
　カプセルギアは、正体を伏せての交流も出来る。
　ギアマスター名で本名を隠し、ギアを通じてのみの交流。
　互いの本当のすがたも知らぬ、仮面舞踏会。
　そのさなかにあって、五郎八はずっと素顔を晒し、しかも怪しまれなかった。
　堂々としていたのに、まかり通ってしまった。
　いいのだろうか。
（考えないでおこう）
　五郎八のつぶやきは、風とともにかき消された。

「――へーすごい！」
　的子はグッズ販売所で大騒ぎだ。
「カプギアのぬいぐるみなんてあるんだ･･････幅広いな」
　とてもアトラクションのレコードを塗り替えたギアマスターとは思えない。
　ギアのぬいぐるみは、つぶらな瞳で的子を見返してきた。
「ファングッズとしては、持っておきたいけど･･････」
　ちらりとネオムのことが頭をかすめる。
　暫く考える。
「･･････お父さ･･････んー。
　お母さんのお土産、ってことで！」
　かぶりを振って、購入を決意。
　

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