ペンギン大王襲来！　流氷三番勝負！｜リアクション

ペンギン大王襲来！　流氷三番勝負！

●始まりは突然に

　夏真っ盛り。それを満喫しようと青い海へ人々が訪れていた。しかしその水面はびっしりと白くて平たい何かに覆われていた。

「夏に浮かれる、けしからん者どもめ。ワガハイが懲らしめてやるのである！」

　流氷に乗ってきたそいつは『ペンギン大王』と名乗った。体長３メートルはあろうかという巨体に豪華な服などを身に纏い、頭に王冠を乗せている。大王は海岸を訪れていた人々に言い放った。

「冬こそ最高！　そなたたち、ワガハイと勝負をするのである。流氷三番勝負である！　そなたたちが勝てば、ワガハイは大人しく帰るのである。しかし、ワガハイが勝てば……この島を雪と氷に包まれた、すばらしきパラダイスへと変えてやるのである！　この島は次の春が来るまで、ずーーーっと冬になるのである！」

　なんとも横暴な物言いだ。その発言に三折部朝衣は憤慨していた。

「冗談じゃないっての、まだ夏は始まったばかりなのに！　まだまだいい波がたくさん来るってのに！」

　せっかくの休日、サーファーガールな彼女は波乗りのためにやってきていた。これから夏本番というときに氷と雪に閉ざされた島にされてたまるものかと怒りをあらわにする。
　城山水樹とヒュー・ヒューバートも困惑した表情を浮かべていた。今日は恋人であるヒューが出張から帰ってきてから最初のデート。２人の時間を大切にしようと海岸へ散歩に来たらこの展開である。ヒューはやれやれと肩をすくめ、水樹は熱意を燃やしていた。

「２人で過ごす初めての夏を妨害されてたまるものですか」

　佐藤瀬莉は海へ遊びに行ったら、偶然この事態に巻き込まれた。

（冬は冬で雪だるまとかかまくらをつくったりスキーやスノボをしたりで楽しいけど、でもやっぱり夏は始まったばかりだし、秋をすっ飛ばしていきなり冬なんて、なんか変）

　季節の流れを無視する違和感に瀬莉は疑問を抱いた。その傍でたまたま散歩で近くにきていた神野美野梨は少し違う視点でこの状況を考えていた。

（興味深いわね。珍しい動物のためなら私はしばらく冬でも構わないわ）

　一方その頃、八神修は自分の部屋で勉強中だった。ふと休憩しようと窓の外を見たら流氷が見えて異変に気づいた。現場を確認せねばと思い、ダウンジャケットなど冬装備で身を固め、転倒防止にスパイクアイゼンをスニーカーにつけて自転車に飛び乗った。
　到着して事情を確認すると流氷三番勝負への参加を申し出た。他の参加者も決まり、寝子島の夏を賭けた戦いの火蓋が切られようとしていた。

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