ペンギン大王襲来！　流氷三番勝負！｜リアクション

ペンギン大王襲来！　流氷三番勝負！

●白くま相撲

　最初の勝負は『白くま相撲』。氷でできた土俵が用意され、その傍で力自慢の白くま力士軍団が仁王立ちしている。これに参加するのは瀬莉と修。

（なぜこうなった……でも仕方ない。女の子だからってナメたら痛い目見るんだから）

　大王は瀬莉の姿を見て、力士軍団のなかから子ぐまを差し向けてきた。見た目では性別は分からないが、少なくとも瀬莉の目にも力は強そうだというのは分かる。躊躇しても仕方ないので、えいやっ、とばかりに勝負に臨む。
　両者が向かい合って、審判による開始の合図で勝負が始まった。瀬莉はすかさず『猫だまし』をかます。相手の目の前でいきなり両手を突き出して掌を合わせて叩く。これによって相手を怯ませて隙を作り、一気呵成に攻めあげるという作戦。
　父親が相撲ファンで、彼の持っていた本でたまたまその戦術を知っていた。まさかそれを使う日が来るとは瀬莉自身思わなかったが。しかし猫だましの効果は薄く、あまり怯んだ様子がない。瀬莉が相手の体に突っ込んでみたものの、押し出したり倒すことができない。
　子ぐまも瀬莉にアタックしてくるが、いまいち決め手に欠ける。

「あはは、子ぐまさん駄目だよ、そこくすぐったいってばー」

　お互いになんとかしようとしているがうまくいかず、相撲というよりじゃれあいになってきた。瀬莉も楽しくなってきて勝負よりも子ぐまと遊ぶのに夢中になってきた。じゃれあっている内に２人とも氷の土俵に同時に足が着いて、結果は引き分けということになった。
　
　試合は次の番に移り、修が土俵にあがる。今度は力士軍団から１体やってきて、同じく土俵の上へ。力士と土俵の上で向かい合うが、まだ構えは取っておらず、お互いの力量を目で測っている。

（体格差的に俺の下半身は掴みにくいだろう……となれば掴みにくるのは上半身。ならば……！）

　修は身につけていたダウンジャケット等を勢い良く脱いだ。この行動に力士も驚いたようで目を丸くした。

（寒さで動けなくなる前に短期決戦だ。相手のほうが体力的に優位だし、どのみち短期狙いだ！）

　審判を挟んで構えをとる２人。そして開始の合図と同時に『猫だまし』を発動する。それで生まれた隙を利用して脇に飛び込み死角へ移動。そしてスパイクで足を踏ん張りすぐさま逆方向へ移動する。
　これで相手の体勢を崩すのが狙いだったが『猫だまし』は先程の試合でも出てきた戦法。だから相手も予想をしていたのか、白くま力士はそこまで驚いていない。修の作戦は半分成功といったところだ。それでも構わず下から斜め上にめがけて体ごと相手にぶつかる。
　真正面から行くよりは効果があり、力士の体が浮き上がりかける。しかし相手も踏ん張り、不安定な体勢ながらも力士が修を掴みにかかる。これを飛び退ってなんとか回避すると、全力で突っ張る。なるべく早く。何度も何度も。

（まだ力士は体勢を戻しきれていない。重心が後ろ気味になってる今のうちに追い討ちだ）

　力士は不安定な状態から攻めるか守るか一瞬迷ったのだろう。その迷いに対して修が全力で突撃を仕掛けると、力士は背中から土俵の外へ押し出された。判定は『押し出し』。修の勝利だ。

「……さむっ！」

　勝負が終わるとすぐさま脱いでいた服を着なおす。『白くま相撲』の結果は１勝１引き分けで修たちの勝利となった。

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