にゃんこ化する日｜リアクション

にゃんこ化する日

『うーん、次はどこに行こうかな。猫ならではだと、塀の上とかどうかな』
『にゃんこちゃんとなら、どこまでもついてくよ』

　てくてく、てくてく。
　二匹は連れ立って、路地裏に入っていく。

『ここからなら、塀の上に乗りやすいんじゃないかな』
『できるかな。お、出来る！　さすがにゃんこちゃん』
『ムッシュくんがいまは猫だからだよ』

　ぴょんっとタルトもまもるの乗っている塀の上に飛び乗った。
　塀の上から見る街並みは、いつもよりも目線が上がって新鮮だ。

『ここから見たら、にゃんこちゃんのポニーテールももっと近く感じるのかな』
『いつもいじってるのに気になるのはそこなの？』
『にゃんこちゃんの大きなポニーテールは最高だからね！』
『ムッシュくんは猫になってもムッシュくんだな』

　なんとなく、しっぽをまもるに絡ませるタルト。
　
『くすぐったいな』
『いや？』
『全然！』

　まもるも、タルトにしっぽを絡ませてみる。
　ふわふわモフモフの感触が、ポニーテールとはまた違った良さを伝えてくる。
　
『にゃんこちゃん、オレ……』
『にゃんじゃお前、俺のにゃわばりでにゃにしとるか！』

　いい雰囲気だったのに、どこからかだみ声が響いてくる。
　振り返ると、塀の上にいつの間にかでっぷりとした貫禄のある野良猫が近づいてきていた。

『あいつ！　いっつも絡んでくる嫌な猫！』
『にゃんこちゃんの敵か？！』
『ふんっ！　にゃにを勝手にゃことを。お前たちが俺のにゃわ張りに勝手に入ってきてるんだろーが！』
『違うわっ。ほかの猫たちからちゃんと聞いてるんですからね。あんたが勝手にボスを名乗ってるだけじゃないっ』
『にゃんじゃと！　やるかぶにゃーーーーーーーーーーー！！！』
『ムッシュくん、あいつをやっつけちゃって！』
『まかせろっ……って、いまは蜘蛛じゃないから糸も何も出せない？！』

　いつもの調子で糸を出して相手の自由を奪おうとしたものの、まもるの手からは何も出てこない。
　可愛い肉球がぷにっとしているだけだ。

『ふーざけとるのかーーーー！　いちゃこらしおってからに、許せん！』
『許さないのはこっちだ！　にゃんこちゃんを虐めるやつはオレが全部ぶったおす！！』

　どーーーーーーーーーーんっ！

　塀の上で、ボス猫とまもるがぶつかり合う。
　おでことおでこをくっつけて、ぐぐぐうーっと唸りあう。

『ムッシュくん頑張って！　そんな奴に負けないでっ』
『負けないよにゃんこちゃん。オレは、にゃんこちゃんを守って見せる！』

　ぐぐぐぐぐーーーっと、体に力を入れ、ボスに一歩も引けを取らないまもる。
　
『でぇええええやあああああああああああああああっ！』
『ぎにゃーーーーーーーーーーーーーー！』

　どっすーーーーーんっ！

　競り負けたボス猫が、塀の上から落っこちて、『覚えてろにゃー！』と捨て台詞と共に逃げ去った。

『やった！　強いぞムッシュくん』
『にゃんこちゃん、怪我はない？』
『もちろん。ムッシュくんが守ってくれたから』

　塀の上で、見つめあう二匹。
　そのシルエットが、そっと寄り添った。

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