サマーバレンタイン♡カーニバル｜リアクション

サマーバレンタイン♡カーニバル

☆プレゼントを買いに

　寝子高二年の八神修は、密かに合流に期待していました。
「あおい！」
「こんにちは、修くん。修くんもパレードを見に来たの？」
　偶然会った大好きな七夜あおいは、いつもの笑顔で返事を返してくれました。
　どきっと心が跳ね上がるのを感じながら、修は平静を装って話します。
「楽しいことは好きなんだ。こういうことは大歓迎だ。撮りがいもあるよ」
　新聞部の修は、カメラを構えていました。
「一緒に回らないか」
　にっこり誘う修に、あおいは頷きました。
「うん。こういうイベントは一人じゃ寂しいよね。あっ」
　何かに気づいた様子で修の服装を見つめます。
「修くん、今日の服装すごくおしゃれだね」
　今日の修のコーデは、チョコ系の色使いのサマーベストやネクタイでイタリア系に決めたおしゃれなものでした。
「形から入るのさ」
　とちょっと照れる修でした。

　修は、カーニバルを撮ったりあおいを撮ったり、忙しくカメラを構えます。
「そこの嬢ちゃんに坊ちゃん、プレゼントだぜ～」
　サンマさんが二人にバラを差し出して来ました。
「え？　俺達にもバラ？」
　バラを受け取った修は、あおいと顔を見合わせました。
　修が自然と笑ってしまったのと、あおいがくすっ、と笑ったタイミングはほぼ同時でした。
　
　パレードを見送った後、二人はバレンタインセールをしている店を見て回ることにしました。
「あ、見て！　入口のボードに限定メニューが書いてある」
「ここの限定メニューはチョコドリンクがランチにつくのか、良いな」
　ワイワイ盛り上る二人です。
「次は……ラーメン屋か。チョコラーメンが！」
「ええっ、ラーメン？」
　爆笑してしまう二人です。
「あ、ちょっと待っててくれる？」
　あおいが何かを思い出したように言いました。
「いいよ」
　どこかへ向かうあおいの背を見送り、修は本を開きます。
（どこへ行くのかな？）
　内心では気になっているのですが。
「お待たせ」
　ほどなく戻ってきたあおいは、バッグから袋を取り出しました。
「これ、サマーバレンタインのチョコ。いつもお世話になってるから」
「俺に？」
　修の顔にみるみる喜びが広がりました。
「ありがとう、嬉しいよ！」
（友チョコだって嬉しい、気持ちが篭ってる）
　思いがけない幸せに、修はじーんと感動しました。
　心からあおいに感謝し、修は言うのでした。
「カフェでケーキでも食べないか」
「うん、食べたかったんだ」
　あおいは嬉しそうに言いました。

　二人はカフェに入り席についてメニューを見つめました。
「限定ケーキにも色々あって目移りするなあ……」
「ほんとだね……」
　やがて注文したチョコケーキが運ばれてきました。
「こちら、カップル様限定のチョコケーキです」
　ウェイトレスさんの言葉に、修は黙って頷きます。
（俺達は厳密にはカップルではないんだけど、野暮は言わない）
「いただきます」
　あおいは幸せそうにケーキを切り、美味しそうに食べます。
　それを見つめる修も幸せでした。
「来年もこんなイベントがあると良いね」
　微笑む修の顔は、誰にも見せたことがないほど優しいものでした。
　