サマーバレンタイン♡カーニバル｜リアクション

サマーバレンタイン♡カーニバル

☆フラワーシャワーと見回り

「町中がカーニバル！　凄いですね。そういえば今日でした」
　寝子高2年の宮祀智瑜は、旧市街の宮祀青果店で店番をしていました。
　するとバラの花びらがふわりと落ちてきたのでした。
（これは義弘先生に出会えるチャンス）
　そわそわする智瑜に、おじいちゃんが声をかけてくれました。
「智瑜、店番はわしがするよ」
　お爺ちゃんに代わってもらって、智瑜は楽しそうな街中に出かけていきました。

「バラでいっぱいですね」
　地面に色んな色のバラの花びらがあって綺麗です。
　目を上げた智瑜の視界に、桐島義弘先生が飛び込んできました。
　先生もこちらに気づいたようです。
「あっ！　義弘先生発見！」
　そう叫ぶと、智瑜は嬉しくて先生にダイブしました。
「……こら、危ないだろう、宮祀」
　大きな胸から飛び込むダイブを、なんとか受け止めた義弘先生が言います。
（こんなところで会えるなんて奇跡です）
　喜んだ智瑜ですが、目に留まった張り紙に『バレンタイン合コン』の文字を見つけてしまいました。
「まさか合コン参加じゃないですよね？」
　恐る恐る質問しますが、智瑜の目は真剣でした。
「何を馬鹿な。見回りだ。生徒たちが浮かれてトラブルを起こしたりしないようにな」
　慌てる様子なく答える義弘先生の態度に、智瑜は安心しました。
「見回りだったら一緒について行きたいです」
「なっ……？　生徒を連れて見回りはおかしいだろう」
「何か問題がありますか？　先生が目を離している間にトラブルに巻きこまれるかもしれませんよ？」
　論理的に説得する智瑜に、義弘先生は返事に詰まりました。
「……節度を守って同行するなら問題はないだろう」　
「わかりました」
　にっこりする智瑜。
　　
「あっ、先生、パレードですよ」
　撒かれた花びらがフラワーシャワーのようで、義弘先生との結婚式をイメージしてしまう智瑜です。
「すっごく綺麗ですよね」
「ああ……」
「先生、見回りは歩くより良い方法がありますよ」
「どんな方法だ？」
　その時、人の横断を待ってパレードの軽トラックが二人のそばで止まりました。
「軽トラの荷台に乗って花びらを撒きながら見回りです。サンマさん、飛び入り参加してもいいですか？」
　そういうと、智瑜は義弘先生の手を取りました。
「な、何？　おい！」
「おー、可愛い嬢ちゃんは大歓迎だぜ！　そこの人も一緒に来るのか？」
　慌てる義弘先生を引っ張って、智瑜は軽トラの荷台に乗り込みました。
「うわあ、びっくりしたあ、きゅう」
　大胆な行動に驚いて気絶するマンボウくん。
「マンボウくん、大丈夫ですか？　義弘先生も起こすの手伝ってください」　
「大丈夫か？　……って、なんで私が軽トラに」
　二人を乗せ、軽トラはゆっくりと走りだしました。
「街中はやっぱりカップルが多いですね。義弘先生、笑顔で撒くんですよ」
　にっこりと智瑜は、荷台にあったバラの花びら入りの袋を差し出しました。
「うちの学校の生徒もちらほら見かけますね。みんな楽しそうに見えます」
「……私を見て笑ってるんじゃないのか」
「そんなことないですよ」
　今更降りることもできず、義弘先生は覚悟を決めてバラの花びらを撒くのでした。
　
「おつかれさまでした」
　軽トラから降りた智瑜は、バッグからチョコを取り出しました。
「どうぞ、義弘先生」
「……私にくれるのか」
「はい」
　それは小さなハート型の苺チョコがいっぱい入った箱でした。
（恋と一緒で甘酸っぱい味です）
　渡す前に自分でも食べてみた智瑜は、義弘先生にも甘酸っぱさを味わってほしいな、と思うのでした。

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