サマーバレンタイン♡カーニバル｜リアクション

サマーバレンタイン♡カーニバル

☆パレード！

「サマーバレンタイン……カーニバル？　夏にもバレンタインがあるんだねぇ……初めて知ったよぉ！」
　眠そうだった小学４年生の曖浜瑠樹の目が輝きました。
　チラシによると、もうすぐパレードが始まるようです。
　情熱的な音楽と共に、遠くにパレードが見えてきました。
（パレード、見物してみるよぉ！　どんな事やるのかなぁ……あっ！）
　ゆっくり近づいてきた軽トラックにはゆるキャラ観光大使たちが乗っています。
「わぁ、サンマさんやマンボウくんが乗ってるトラックだぁー！」
　サンマさんとマンボウくんの間には中沢リッカルド町長もいるのですが、サンマさんたちに夢中な瑠樹の目には入っていません。
「サマーバレンタインだぜ！　バラをどうぞ！」
　サンマさんが差し出してくれた薔薇を受け取ると、その隣ではマンボウくんが。
「うわあ、人がたくさんいて緊張しちゃうよ……きゅう」
「こらこら、気絶してないで愛を伝えてください」
　例によって気絶しかけるところを、慌てて町長が介抱します。
「ねえ、サンマさんやマンボウくんには好きな人がいるのかなぁ？」
　近くにいた瑠樹が話しかけました。
「俺は可愛い嬢ちゃんはみんな好きだぜ！　可愛い嬢ちゃんじゃなくても応援してくれるファンは好きだな」
　サンマさんが模範解答をする一方で。
「好きな人……？　うわあ、は、恥ずかしいよお……きゅう」
　マンボウくんはやっぱり気絶してしまいました。
「ごめんなぁ、大丈夫？」
　マンボウくんを気遣う瑠樹に、町長がすかさずフォローに入ります。
「大丈夫、君のアモーレはマンボウくんにもちゃんと伝わった。すぐに元気になるよ」
「そうかぁ。サンマさんもマンボウくんも、格好良くて可愛くて和むねぇ……ありがとうなぁー！」　
　そしてようやく町長の存在に気づいた瑠樹です。
「車の人達もありがとうなぁー！　町長さんもありがとうなぁー！」
　そう叫んで手を振った瑠樹は、ふと周りを見回してカップルの多さに気づきました。
　
　さっきもらったバラを見つめます。
「お花……そうだ、桃井さんもどこかにいるかなぁ？」
（貰ったバラは貰い物だからあげられないけど、バレンタインだし、チョコを買ってあげられたらいいなぁ）
　夏休みを楽しむため、お小遣いはちゃんと貯めてありました。
「お店でもサマーバレンタインのコーナーあったらいいなぁ。でも、夏だし暑いし、溶けちゃうかなぁ？」
　溶けにくそうなチョコはないかなぁ？　と瑠樹は考えます。
　まずはチョコのお店に向かうことにしました。
　ガトーショコラを買った後、店員のお姉さんに尋ねます。
「あの、溶けにくいチョコありませんか？」
「それじゃ、これはいかがですか？」
　お姉さんが勧めてくれた、手ごろな値段のチョコを買って包んでもらい瑠樹は店を出ました。

　すると、お店の前を桃井かんなが歩いてくるではありませんか！
「桃井さん、こんにちはぁ……と、サマーバレンタイーン！」
　いきなりチョコを渡した瑠樹に、かんなは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になりました。
「何、これ？」
「溶けにくそうなチョコにしたけど、どうかなぁ？」
「私に？」
「うん」
「……ありがとう。せっかくだから、もらっておくわ。じゃあね」
　いつものクールな調子でかんなは言いましたが、瑠樹は満足でした。
（来年もサマーバレンタインを楽しめるといいなぁ！）
　そう思いながら、バレンタインの町をもう少し歩いてみることにしたのでした。

このページにイラストを設定する