サマーバレンタイン♡カーニバル｜リアクション

サマーバレンタイン♡カーニバル

☆手作りトリュフ

（今日はサマーバレンタインなんですね。好きな人と一緒に過ごせたら嬉しいです）
　寝子高２年の御巫時子は、どこからか聞こえる賑やかな声に誘われてお出かけすることにしました。
　着物を着て日傘をさして賑やかな方へ。
　途中で五十嵐尚輝先生を見かけました。
「こんにちは尚輝先生、一緒にカーニバルを楽しみませんか……？」
「そうですね。しかし人が多いですね」
　答えた尚輝先生に、時子は言いました。
「はぐれないように、手を繋いでいきませんか……？」
「そういうことなら仕方ないですね」
　すっと伸びてきた尚輝先生の手を、時子はぎゅっと掴んだのでした。

「街がバレンタイン一色ですね。町長さんも素敵な企画をされますね」
　バレンタインカーニバルのトラックから撒かれる薔薇の花びらが綺麗で、時子は見惚れました。
「あ、先生、髪にバラの花びらが……」
　時子はそっと尚輝先生の髪に手を伸ばし、髪についた花びらをとりました。
　髪に触れられたとき、ぴくり、と一瞬尚輝先生は固まったようでした。
　けれどそのまま、尚輝先生は時子のなすがままでいました。　
　時子が花びらを取り終えた時、何事もなかったように尚輝先生は言いました。
「ありがとうございます」
　時子はにっこりと頷いたのでした。

「２月と錯覚してしまいそうですね。……先生、あそこで少し休みませんか？」
　歩き疲れた二人は、カフェテラスに腰を落ち着け薔薇を浮かべた紅茶とチョコを食べました。
　そこへ瑠樹がやってきました。
「あ、鷹の時のお姉さん、こんにちはぁ！　お姉さんも恋人と一緒なんだねぇ」
「えっ……」
　時子はドキドキしました。
「ああ、似合ってるかな？」
　さらに尚輝先生がそんなことを言い出して。
「……せ、先生？」
　時子は驚いて先生を見つめます。
　時子の頬は真っ赤に染まりました。
「うん！　とってもお似合いだよぉ。オレ、チョコを買いに行くんだ。それじゃあね！」
　無邪気に瑠樹が答えて、去っていきますが、時子は挨拶を返すのも忘れて尚輝先生を見つめていました。
「すみません、ちょっとした冗談です」
「……そうですか」
　尚輝先生はなんでもない様子で言いましたが、時子の胸のドキドキはなかなか納まりませんでした。
「……薔薇の良い香りがしますね」
「そうですね」
　平静になろうと、話題を変える時子です。
　けれど時子の目には、『カップル割引』と書かれた文字が飛び込んでいました。
（私もいつか好きな人の恋人になれたら……）
　今はまだ秘めたままでいたい、けれどもどかしい思いでした。

「今日はありがとうございました」
　別れ際に時子は手作りのトリュフチョコを取り出しました。
　保冷剤を入れて持ってきたものです。
「これ、チョコレートです。溶けないように冷蔵庫に入れて下さいね」
「ありがとうございます」
　尚輝先生は頭を下げてそれを受け取りました。
「実験の合間にでも食べてもらいたいです」
　甘い時間に感謝しつつ、時子は微笑むのでした。
　