携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード3｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード3

「霧で視界を封じる斬撃主体の高速機動型、ね……」

　いつも通りの知的な大和撫子然として佇まいを見せる八重崎五郎八。
　しかし、五郎八は目の前に立つ昏き皇帝ディープスの刺客であるジャック・ザ・リッパーを見て、大きなショックを受けていた。
　
　そう。五郎八のギアであるイズナとジャック・ザ・リッパーは完全に同じタイプのギアなのだ。
　より簡単に言えば、要は被ってるというわけだ。

「うん、まあうん何というか……うん……。まあ、取敢えず迎え撃ちましょうか」

　どうリアクションしたらいいんだろうみたいな顔をするものの気を取り直すように眼鏡の位置を直し、自らのカプセルギアを取り出す五郎八。
　それを見たジャック・ザ・リッパーも全てを呑み込まんとするかのような霧を生み出し、今戦いが始まる。

「まずは双柄槍モードで良いかな」

　スカーフで顔を隠した忍者を思わせるギアであるイズナの右側のアームパーツであるヴァリアブルエッジには幾つかのモードが存在する。
　今回はその内の一つであるは双柄槍モードでまずは行く事にしたようだ。

「うわぁ、本当に全然見えないねぇ」

　まるで何かが風を切るような音が聞こえたかと思えば、イズナが攻撃をされる。
　ダメージ自体はけして大きくはないもののいきなり攻撃をされた事を思えば楽観視できる状況ではない。
　五郎八の指示を受けてイズナがクナイランチャーを掃射しその場から離れるように動く。

「霧に乗じて攻撃されると流石にこちらが不利だねぇ……これは拙いかも」

　顎に人差し指を当てて思考を巡らしながらそんな事を呟く五郎八。
　しかし、どうしようか考えているような素振りや呟き。実際に迷っているようなイズナの挙動。それら全ては――虚構のものだ。

（……なんて、まあ、勿論、言うまでもなく口三味線なんだけどね、うん）

　心の中でそう呟く五郎八。もし、心の中を映像で現せればきっとペロと舌を出して悪戯成功とでも言うような表情の彼女が出る事だろう。

（というか、高機動型で斬撃主体で更に視界封じでハメ殺しって、流石に幾ら何でも被りすぎでしょイズナと）

　だが、別にジャック・ザ・リッパーとてイズナの存在をしていたわけではないので、ただの偶然の産物である。
　苦戦をしているかのような素振りは未だ続け、少しずつ五郎八は相手を嵌める為の準備を進めていく。

　そもそもの話、ジャック・ザ・リッパーと戦術が被っているという事は性能や所持している機能も似た様なものになっているという事だ。
　つまりイズナもヘッドパーツであるダークアイが積んでいるセンサー類によってこの霧の中でも索敵が可能なのだ。

　ここで問題なのは、五郎八は向こうの性能を既に知っているが、向こうはそんな事を知らないという事にある。
　その情報の有無の差を利用して、五郎八は一気に勝負を決めるつもりでいた。

（まぁ、ここまで近いタイプともなれば普通にやり合えばともすれば消耗戦になるからねぇ。私に同タイプのギアを当ててくる時点で手の内は知れてないし、手の内隠して一撃で決める、ってね）

　キラリと光る五郎八の眼鏡。その奥にある眼はセンサー類による反応をけして逃さないと言わんばかりだ。
　五郎八の狙いはただのカウンターではない。勝負を決める必殺のカウンターだ。それ故に、相手が踏み込んでくるというタイミングを間違えるわけにはいかなかった。

（段々と相手が切り込んでくるようになってきてる。もう少し……もう少し……。今だっ！）

『グ、ガッ！？　ば、馬鹿なッ』

　何か硬い物を切り裂き両断するような音が大きく響く。
　イズナの手にはいつの間にか大手裏剣モードへと変更されたヴァリアブルエッジが握られている。

『貴様、見えていたのか……？』
「ま、そういう事ね。私のイズナはそっちと似た様な性能しているの。だから、霧だろうと見通せる眼を持ってるのよ」
『くっ、おのれぇ……』
「ねぇ、ところでさ。こんな散発的な戦いじゃなくてもっと派手にしたらどう？　場所ならうちの店を提供するわよ？　あ、いっそうちの店で皇帝VSギアマスター決戦……とかできないかなぁ？」
『……貴様は何を言っているんだ』
「いや、言葉の通りなのだけど」
『そんなもの、俺に尋ねるな。あのお方に聞け』

　呆れたような、そんな言葉を残してジャック・ザ・リッパーは昏い緑の炎の中へと消えていく。

「それならせめて、連絡先とか教えてくれないかしら」

　どんな時でも商売の事を忘れない五郎八。果たして、彼女が昏き皇帝ディープスと商談をする日は来るのか！

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