アニメ『らっかみ！』のファン感謝デー｜リアクション

アニメ『らっかみ！』のファン感謝デー

　イベント会場となった映画館には多くのファンが押し掛けた。すでに満席となっていた。通路や階段に立ち見の姿が見られるようになった。
　その様子を山路真菜はこっそりと覗いていた。顔は強張り、強い思いが目を潤ませる。
　――寝子島アニメーション学院の声優科を卒業してデビューはしたけど、モブキャラやチョイ役が多くて、心が折れそうな四年間だったわ。
　そんな私が人気アニメの『らっかみ！』で準レギュラーの仙藤蒼に抜擢されて、こんな大きなイベントのステージに立てる日がくるなんて……。
　眦に溜まった涙を人差し指で拭う。肩は小刻みに震えていた。
「あまり思い詰めない方がいいわよ」
　低い声を掛けられた。振り返ると細入薫が微笑んでいた。中性的な容姿で爽やかなパンツルックで決めていた。
「お姉ちゃ、あ、ごめんなさい」
「いいのよ。『らっかみ！』では仙藤紫だからね」
「ありがとうございます。でも、大先輩に失礼になるので。細入さん、心配してくださってありがとうございます」
　真菜は頭を下げた。薫は横に並んで観客席の状態を目にする。
「多くのファンに支持されて、私も嬉しいわ。少年役が多かったからね」
「細入さんの演じる少年はどれも活き活きとして、私も大好きです。もちろん今回の役もとても素晴らしくて、お姉ちゃんって言いそうになりました」
　言い終わると恥ずかしそうに笑った。
「蒼、ありがとう」
　紫の声で言われた。真菜は顔を赤らめて想いを返す。
「お姉ちゃん、今日はよろしくね」
「蒼、そのつもりよ」
　二人は本当の姉妹のように言葉を交わした。