アニメ『らっかみ！』のファン感謝デー｜リアクション

アニメ『らっかみ！』のファン感謝デー

　寝子島駅で遠藤詩子は下車した。水色のノースリーブワンピースで旧市街を軽やかに歩く。参道商店街のレトロな雰囲気を楽しんでシーサイドタウンへと向かう。
　桜花寮を目にして立ち止まった。女子寮に関心を寄せる。
　――私が演じる水上桜の寮が、ここなのね。
　じっくりと眺めて再び歩き出す。寝子島高校を横目で見て、間もなく星ヶ丘に入った。
　高級感の漂う邸宅に溜息が漏れる。星ヶ丘寮も負けてなく、遙か遠い異国を思わせた。
　――アニメのような現実って、本当にあるんだね。
　門の前で踵を返すと詩子はシーサイドタウンに向かった。アニメの舞台でもよく使われるキャットロードを機嫌よく歩いた。
「あれは」
　見かけたアクセサリーショップに駆け寄る。ショーウインドウに飾られていたネックレスやブレスレットを食い入るように見詰めた。
　――要チェックね。現実に桜ちゃんがいたら、ここでパーツを買ったりするのかもね。
　親しい友達に見せるような笑みを浮かべた。

　寝子島シーサイドタウン駅で降りた南明日香は笑顔となった。背中には赤い小ぶりのリュックを背負い、花柄のサマードレス姿で走り出す。噴水が見えるところで足を止めた。
「ここが寝子島かー」
　到着の喜びを噛み締める。そこに詩子がのんびりと歩いてきた。
「早いね」
「あ、遠藤さん、今日はよろしくお願いします！」
「こちらこそ、よろしくね。その髪型は役に合わせたのかな」
「このポニーテールですか。実はその通り！　イベント、頑張っちゃうんだよー！　えっへへー、てな感じです」
　明日香はアニメの鈴原天音の口調で言った。
「私も頑張らないとね」
　二人は揃ってイベント会場である映画館へと足を運んだ。すでにファンは詰め掛けていてかなりの行列が出来上がっていた。
　ひっそりと目にした明日香は硬い表情になった。
「……少し緊張しますね」
「現役のアイドルだから見慣れているんじゃないの？」
「これとそれは別ですって。私の声優歴は五年で、まだまだ新人ですから」
　ポニーテールを震わせて詩子に詰め寄る。
「私は十年だからすっかり慣れちゃった」
　おどけた調子で言うと明日香は表情を和らげた。

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